英語から日本語への書籍翻訳の注意点~産業翻訳との違い
近年、弊社の翻訳業務においては、従来の産業翻訳に加え、書籍や漫画といったコンテンツの翻訳案件も徐々に見られるようになってきています。一見すると「翻訳」という点では同じように見えますが、実際に進めてみると、産業翻訳とは異なる観点での検討や判断が必要になる場面も少なくありません。
本ブログでは、英語から日本語への書籍の翻訳を中心に、実際の案件を進める上で注意すべきポイントをまとめつつ、産業翻訳との違いについてご紹介します。
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書籍翻訳で一貫性が重要な理由とは?産業翻訳との視点の違い
書籍翻訳では、文章全体の流れと一貫性の両立が特に重要になってきます。
産業翻訳でももちろん訳の正確性や用語・表現の統一が重視されますが、書籍の場合はそれに加えて、章や節ごとや本文全体で論理構造の整合性が取れていることや、文章として読んだときの流れや繋がりにも気を配ることが求められます。
文単位で正確であっても、論理展開などに違和感や不整合があれば、読者の理解に影響を与えます。これでは十分な品質とは言えません。そのため、翻訳工程においては部分ごとの正確さと同時に、全体を見た観点を取り入れ、通読を前提とした品質確認を行う必要があります。
日本語書籍の縦書きレイアウトで注意すべき数字・記号の表記ルール

またレイアウト調整や表記ルールに関しても、産業翻訳とは異なる点が多くあります。産業翻訳では英語や多言語から日本語へ翻訳する場合、成果物も自然と横書きで構成されることが一般的です。
一方で、書店に並んでいる書籍を手に取ってみると、日本語の専門書では縦書き表記のものが多いです。そのため、日本語への書籍翻訳においては、数字や記号の扱いが横書きとは異なります。例えば、2桁の数字は縦中横(半角)で処理して、それ以外の桁数は全角というようなパターンもあれば、2桁だけでなく3桁にも縦中横を用いるパターンもあったりと、案件ごとによる可能性があります。
さらに、文脈によっては算用数字ではなく漢数字を用いることが求められる場合もあるでしょう。これらのルールは産業翻訳ではあまり重視されない要素であるため、書籍翻訳においては、早い段階でスタイルを定義し、翻訳から組版まで一貫して適用することが重要です。
翻訳準備のリサーチが著作権侵害につながる?表現の独自性を守るポイント

さらには著作権および表現の独自性への配慮も必要です。専門書籍を翻訳する場合は、同じジャンルの既存の書籍やコンテンツを参考にすることもあります。翻訳準備の段階でそういったものをリサーチして必要な知識を学習することで、その後の翻訳者への作業指示やQA(品質保証)工程での品質向上に良い影響が期待できると思います。
しかし、参考として使用したコンテンツに含まれる表現をそのまま流用することはご法度です。内容理解のためのリサーチと、実際の翻訳作業における表現構築は明確に区別する必要があります。特に複数資料を参考にした場合などは、意図せず既存表現に近づくリスクもあるため、あくまで原文の文章・文脈に即した、独立した訳文になるような体制や作業指示、進行管理が必要になります。
社内文書と書籍では品質管理のどこが違うのか?流通範囲から考えるレビュー設計
産業翻訳で扱う社内マニュアルや技術文書は限定的な範囲での利用が前提となる一方で、書籍は一般に流通し、あらゆる人の目に入る可能性があります。これは書籍のみならず、プレスリリース等の翻訳でも同様です。
翻訳の重要性自体は用途を問わず同等ですが、成果物の流通範囲や参照のされ方が異なるため、品質管理やレビュー体制においても、それを前提とした運用が求められます。
まとめ
書籍翻訳では、訳文の正確性に加えて、文章全体の一貫性、レイアウトや表記ルール、著作権への配慮など、複数の要素を意識する必要があります。いずれも産業翻訳と共通する部分はありますが、書籍という形態で一般に流通することを前提とすると、注意すべきポイントや求められる対応には違いが出てきます。
個々の翻訳精度だけでなく、全体としてどのように読まれるか、どのように利用されるかまで含めて設計していくことが、書籍翻訳における品質確保につながるのではないでしょうか。
参考
縦書き広報誌の数字表記の統一と「縦中横」一括変換 | 本の印刷工房
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