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【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.13 | 主な症状の解説⑥

Ⅵ. 肥満(Obesity)

1) 肥満についての基礎知識

肥満の定義

肥満(Obesity)は「体脂肪の過剰蓄積(Accumulation of excess Body Fat)」を意味し、筋肉トレーニングなどによる体重増加は肥満には該当しない。関取、とくにアンコ型力士は、肥満があるかのように見えるが、実際には体脂肪の蓄積はわずかで、肥満体ではない。 体脂肪の蓄積は、皮下脂肪型と内臓脂肪型のふたつがあるが、健康上問題となるのは後者であり、前者は適度の摂食と運動により、短期間で改善する。

世界的には、肥満はBMI≧25としているが、わが国の成人特定健診では、以下に該当する場合を、肥満と規定している。

BMI(Body Mass Index 肥満度)が25以上

腹囲が、85㎝(男性)、90㎝(女性)以上

 

腹囲を追加した理由は、内臓脂肪蓄積の程度を、腹囲がよりよく反映することによる。BMIは、体重(Kg)と身長(m)から、次式により算出する。
BMI=Wt/Ht2
例:体重 70㎏、身長 1.7mの場合、BMI=70/1.72 =70/2.89=24.2
BMIの正常範囲は18.5~25である。肥満の程度は、BMIにより4段階に分類する。

肥満 1度: BMI 25~30

2度: 〃 30~35

3度: 〃 35~40

4度: 〃 40以上

 

肥満の頻度

日本人の肥満の頻度は40~60歳の成人で、約30%であるが、女性では、最近は減少傾向にある。しかし、米国では成人の2/3が肥満で、特に、黒人とヒスパニックの女性でその頻度は高い(黒人女性:82.1%、ヒスパニック女性:75.7%、白人女性:59.5%)。しかし、肥満を BMI≧30%とした場合、米国成人のBMI平均値は男女とも28.7で、肥満の頻度は、男性:35.5%、女性:35.8%となる(Flegel KM, Carroll MD, et al: Prevalence of Obesity and Trends in the Distribution of Body Mass Index among US Adults. JAMA 307(5):491-497, 2012)。米国でも日本と同様、女性では肥満の頻度は、近年は減少傾向にある。

2) 肥満対策が重要な理由

特定健診など、国が積極的に予算を投じ、肥満対策を進める理由は、肥満が、高血圧、動脈硬化、糖尿病、など、生活習慣病の最大の危険因子(Risk Factor)であることによる。  肥満が健康によくないことを、学問的に説明することはむずかしいが、人体を自動車に例えて考えると、常識の範囲で、直感的に理解できる。自動車に、不要な重い荷物(過剰の脂肪組織に相当)を乗せて走行すると、燃費はかさみ(余分の栄養摂取に相当)、車体やタイヤの劣化(骨、軟骨の摩耗に相当)、エンジンにも負担がかかり(心臓の負担に相当)、車体構造全体の劣化が進行する(老化、動脈硬化の促進に相当)。したがって、健康には、肥満は百害あって一利なしと思ってよい。

3) 減量効果について

中性脂肪、血圧、空腹時血糖は、いずれも生活習慣病検診で行う重要な測定項目であるが、肥満者の体重が1~3%減るだけで、中性脂肪は低下し、3~5%の低下で、血圧、空腹時血糖も低下する。成人検診や人間ドックで、肥満と共に、高血圧、高脂血症、高血糖などを指摘されたひとが、最初にすべきことは減量(カロリー制限と運動)であり、降圧剤や脂質を下げる薬剤の服用ではない。

4) 鑑別診断

浮腫(Edema)、水分貯留(Fluid Retention)との鑑別

肥満に気付くまでには、通常、数週間から数カ月かかるが、浮腫は、より急速に出現する。下腿(脛骨部)や背中の仙骨部を指で押して、圧痕が残れば、浮腫と診断してよい。ただし、浮腫と肥満が同時に存在することもある。 浮腫は、心不全、慢性腎炎(ネフローゼ症候群)、肝硬変など、重篤な基礎疾患でしばしば合併する症状である。

肥満を伴う疾患もしくは病態

禁煙後:禁煙後、食欲が増進し、一過性に体重が増えることはよくある

閉経後:閉経後、約20%の女性で、3年以内に4~5㎏、体重は増加する

副腎皮質ホルモンの服用

運動量の減少:移動に車を使用し、歩かなくなった場合など

糖尿病:インシュリンや血糖降下剤の投与後、体重は増加することがある

避妊薬:避妊薬の服用後、約20%で、体重は2~3㎏増える

内分泌疾患:クッシング症候群、粘液水腫(甲状腺機能低下症)など

閉塞性睡眠時無呼吸症候群:いびきがひどい人に多い。居眠り事故などの危険があり、早急に治療を受ける必要がある。

毛利昌史

毛利昌史

東和病院名誉院長。東京大学医学部医学科卒業。米国ミネソタ大学留学(フルブライト留学生)ミネアポリス市Mount Sinai Hospital勤務。帰国後、東京大学第二内科助手、東京大学医学部附属病院中央検査部講師、三井記念病院呼吸器センター内科部長などを歴任し、平成15年に国立病院機構 東京病院名誉院長に就任。その後化学療法研究所付属病院院長、東和病院院長を経て現在は東和病院名誉院長。

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