
【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.11 | 主な症状の解説④
Ⅳ.頭痛(Headache)
頭痛は、既に述べた疼痛(Pain)のひとつではあるが、単独の訴えとしても頻度が高いので改めて解説する。
頭痛は、誰でも経験する症状で、そのほとんどは自然に治癒し、後遺症もなく、良性の経過(Benign Course)を辿る。飲酒後もしくは、二日酔いの頭痛は、アスピリンの服用だけでよくなる頭痛の典型である。しかし、頭痛の中には、くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage)、脳腫瘍(Brain Tumor)、髄膜炎(Meningitis)など、生命に関わる重篤な疾患が基礎にある場合があり、単純な頭痛(Simple Headache)との鑑別は、臨床上極めて重要である。
①分類
一次性頭痛(Primary Headache): 基礎疾患がない頭痛
1.緊張性頭痛(Tension Headache): 日常の診療で、頭痛の90%以上は緊張性頭痛
特徴:
- 患者さんは「いつもの頭痛」と表現
- 側頭部(こめかみ)などを押すと痛い(=圧痛がある)
- 肩や首をもむとよくなることが多い
- 眼精疲労が原因の場合は、目の上を軽くもむだけでよくなることがある
顔面、首すじ、目頭、側頭部などに圧痛点があったら、外傷の既往がない限り、緊張性頭痛と診断して、ほぼ間違えない(自己診断にも役立つ所見です)。
2.片頭痛(Migraine Headache): 女性に多い(男女比は約1:3)
特徴:
- 緊張性頭痛と異なり、痛みは拍動性(ズキンズキンと感じる痛み)
- 女性に多く、生理と関係することが多い(例:生理前頭痛)
3.群発頭痛(Cluster Headache):男に多い(男女比は約6:1)
- 激痛で、出産痛よりも痛いとされている。痛みは目の奥のことが多い。
- 頻度は低いが(頭痛の0.1%程度)、痛みが強烈であるため、救急搬送が必要。
二次性頭痛(Secondary Headache): 基礎疾患がある頭痛
- 感染:一般の風邪から脳炎、髄膜炎、副鼻腔炎など、その範囲は広い
- 薬剤性:例 カフェイン、アルコール、経口避妊薬、など
以下の疾患の疑いがある場合は、総て入院が必要
- くも膜下出血(SAH: Subarachnoid Hemorrhage)
- 脳腫瘍(Brain Tumor)
- 脳圧亢進(Elevation of Intra-Cranial Pressure):例 頭部外傷後の脳水腫(Brain Edema)、硬膜下血腫(Subdural Hematoma)
- 脳卒中(Stroke)
②診察時に確認すべきこと
1.今回のような頭痛は、、、
- 以前にも経験したことがある ⇒ 良性頭痛の可能性が高い
- 初めての経験である ⇒ 二次性頭痛を疑う
2.どのような頭痛か:例 拍動性頭痛 ⇒ 片頭痛の可能性がある
3.頭痛の起り方(頭痛はいつ始まったか?)
- 出現時間は、正確には特定できない ⇒ 通常の頭痛の可能性が大きい
- 突然の出現(Sudden Onset)で、ほぼ正確に時間を特定できる ⇒ くも膜下出血SAH: Subarachnoid Hemorrhage) など血管性疾患を疑う必要がある
4.頭痛の持続時間
- 数日以上持続 ⇒ 基礎疾患がある二次性頭痛の可能性が高い
5.随伴症状の有無
- 発熱:感染性疾患の可能性が大きい 例 ウイルス感染
- 高熱が続く場合 ⇒ 最近の海外渡航の有無を確認する
- 結核の既往歴、および結核患者との接触の有無の確認も必要
- 頸部硬直(Stiff Neck)がある場合 ⇒ 髄膜炎Meningitis)を疑う
- 吐気(Nausea)、呕吐(Vomiting) ⇒ 脳圧亢進の可能性がある
- 頭部外傷の既往がある場合:脳水腫(Brain Edema)、硬膜下血腫(Subdural Hematoma)の可能性が高い
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