
【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.8 | 主な症状の解説①
主な症状の解説①
今回からは、日常の診療(Daily Clinical Practice)で患者さんが訴えることが多い、めまい(Dizziness)、疲労感(Fatigue)、発熱(Fever)、腹痛(Abdominal Pain)、などについて解説する。
Ⅰ.めまい(Dizziness)
1. めまいの分類
患者さんが訴える「めまい」にもいろいろあり、通常、以下の4群に細分する(subtype)。
- 眩暈(Vertigo)
- 意識障害(Presyncope)、失神(Syncope)
- 平衡障害(Disequilibrium)
- ふらつき(Lightheadedness)
しかし、実際には、単純に分類できないこともあり、とくに老人のめまいは複雑で、①~④のどれにでも少しずつ、当てはまることが多い。
① 眩暈(Vertigo)
自分もしくは、周囲が回転していると感じる錯覚(Illusion)症状のひとつ。
② 意識障害(Presyncope)
気を失うのではないかと思う状態で、実際に失神することはない。失神(Syncope)は、突然、一過性に意識喪失の状態になることをいう。ヒステリ(Hysteria)でも同様の訴えをすることがある。
③ 平衡障害(Disequilibrium)
平衡感覚を失い、歩けなくなる状態。英語では”Dizziness in the feet”ともいう。
原則として、寝たきりで歩けないひとにDisequilibriumは起きえない。
④ ふらつき(Lightheadedness)
①~③のいずれにも該当しない「めまい」の訴え。英語ではUndifferentiated dizzinessともいう。糖尿病で低血糖発作時にも患者さんは「ふらつき」を訴えることがある。
2. めまいの病因(Etiology of Dizziness)
めまいの病因は、その60%が内耳疾患(末梢性前庭疾患(Peripheral Vestibular Dysfunction)、もしくは心因性(Psychogenic)とされているが、その他、血行障害(たちくらみ:起立性低血圧(Orthostatic Hypotension) による一過性脳虚血、椎骨脳低動脈循環障害:Vertebro-basilar artery insufficiency VBI)、血管炎、脳腫瘍、などが原因のこともある。
しかし、めまいの約15%は原因不明である。
めまいを主訴とする内耳疾患ではメニエル病(Meniere’s disease)がもっとも有名であるが、メニエル病では耳鳴(Tinnitus)や難聴(Hearing impairment)を同時に訴えることが多い。
3. 経過と予後
めまいは、慢性化はしても経過は、通常良好であるが、以下の場合は生命に関わる可能性があり、注意を要する。
① 胸部圧迫感を伴う場合:
急性心筋梗塞の可能性がある
➁ 発症が突然(abrupt onset)で複視(Diplopia)、片麻痺(Hemiparesis)、構音障害(Dysarthria)などの神経症状を伴う場合:
椎骨脳底動脈循環障害(VBI)、脳幹部腫瘍、髄膜脳炎(Meningoencephalitis)、多発性神経炎(Polyneuritis)などの可能性がある。
③ 突然の失神発作で、脈拍数が極端に低下している場合(10~20/分以下):
アダムス・ストークス発作(Adams-Stokes Attack)を疑う。
④ 突発性眩暈発作(突然の眩暈:Acute Vertigo)で24時間以上症状が続く場合:
小脳梗塞(Cerebellar Stroke)、小脳腫瘍(Cerebellar Tumor)などの可能性がある。
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