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これからの特許翻訳①知財業界、特許翻訳の特色

近年、翻訳業界全体では機械翻訳の技術が大きく向上するなど、状況は変化しつつあります。今回は、産業翻訳の中でも特殊といえる特許翻訳のこれからについて、プロフェッショナル2名をお招きし、業界の特徴から、機械翻訳の影響、またコロナ禍の現状など、お話を伺いました。


目次

知財業界、特許翻訳の特色
特許翻訳の現状 コロナ禍の影響
特許翻訳の現状 関東と関西の違い
特許翻訳と翻訳支援ツール(CATツール)
翻訳支援ツール(CATツール)と翻訳メモリの活用
特許翻訳と機械翻訳
特許翻訳とみんなの自動翻訳@KI(商用版)
​​​​​​​特許翻訳とポストエディット
ツールとコトバの根本的な問題
人の翻訳の必要性と機械翻訳との共存


葉山:
今回は特許の翻訳において第一線でご活躍されているお二人にお越しいただきました。まず、今日お越しいただきました糸目さんと片岡さん、簡単に自己紹介をいただければと思います。


糸目:
本日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。株式会社Cygnapiaという会社を経営しています、糸目慈樹と申します。もともと特許事務所で合計で15年ほど、インハウスの特許翻訳者として勤めていました。

今日いらっしゃる片岡さんは、最初に特許翻訳を始めた頃にお世話になった先輩になります。株式会社Cygnapiaを設立して2年経ちましたけれども、おかげさまでちょっとずつお客様もついて、特許翻訳をメインにしていますが、memoQという翻訳支援ツールのユーザーサポートもさせていただいております。この二本柱で会社を運営しています。

片岡: 
本日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。片岡みわこと申します。私も2つの特許事務所で合計18年、特許翻訳の仕事をさせていただきまして、オンザジョブというか、翻訳学校というようなところには行かずに、もう最初からいきなり特許翻訳をして、それを先輩に校正してもらうという形で特許翻訳を始めました。

18年経ちまして、少し分野を広げたいですとか、特許以外のこともやってみたいという思いで、2020年に独立いたしました。現在はフリーランス翻訳者として仕事をしながら、ある大学で医薬関係の研究室のお手伝いのようなこともしております。

今は化学・IT・バイオが中心ですが、いろんな分野の依頼が来ますので(笑)、ジャンルはさまざまです。

知財業界、特許翻訳の特色

葉山:
ありがとうございます。我々が携わるいわゆる産業翻訳の仕事の中には、たとえば医療系や、工業系のメーカーからの仕事、あるいは法律系など、いろいろありますが、知財分野でご活躍されているお二人のご印象として、特許翻訳の特色はどのようにお感じでしょうか?


糸目:
はい。非常に専門性の高い分野というように思われていると想像しますけど、確かにそういう側面はありますね。やはり、法廷で何年も係争する文章を翻訳しているので、そこは非常に緊張しながら、一つ一つ、もう一文字も逃さず読み込んで、正しく解釈して訳さなければいけない。

まあ、翻訳で適当にやっていい分野なんてないと思いますが、特許翻訳の場合は、もし変な翻訳をすると、向こう何年もそれで影響があったり、痛い目をみちゃうということです。他の分野よりも気を引き締めて翻訳している、というところはありますね。

葉山:
そうですよね。おっしゃる通りですよね。当然、我々からの売値にしても、やはり一般的なビジネス文書より値段も高くなることもありますし、非常にシビアな業界だと私も感じています。片岡さんの印象はいかがですか?


片岡:
糸目さんがおっしゃったことと私もほぼ同じなのですが、付け加えるとしますと、最先端の技術に関する記述が多いので、なかなか調べものが大変といいますか、たとえば、インターネットとか使って検索してもすぐには情報が得られない、あるいは英語の文献しか見つからないとか、そういったことが結構あります。


糸目:
確立された用語がない、という場合もありますよね。そういうときにどう訳すのか。権利範囲というのが特許にはつきもので、変な用語に訳してしまうとそれが災いして特許の権利範囲が狭まってしまう、ということもあり得ます。


片岡:
従来使われている用語を使うのが必ずしも良いとは限らない、というところも難しくて。要するに特許というのは従来の技術からの「差異」について書かれているべきものなので、そこもちょっと難しいところです。


葉山:
なるほど。確かにそうですね。勉強になります。


糸目:
付け加えると、単に言語学的に日本語を英語に、また英語を日本語に変えるというだけではなくて、特許制度についても理解していないと、「こういう訳し方をすると、将来的にどうなるか」という結果が予測できません。

語学力だけではできない翻訳だと思います。特許制度について弁理士ほどでないにしても、一通りの流れはある程度熟知している必要があります。

葉山:
その辺りについては、特許翻訳者さんの中でも、かなり精通された方、あるいはこれからの方とか、やはり優劣ありますか?


糸目:
ありますね。経験によるところが多いです。そういう意味で、特許事務所の実務を経験されている翻訳者の方が強みがあるのかな、とは思います。


片岡:
私も今、それを言おうとしてました(笑)。特許事務所にいますと、明細書(明細書:パリルート用、PCT各国移行用など)だけではなく、中間処理(中間処理:拒絶理由通知書、意見書、手続補正書など)のお仕事もすると思います。
中間処理をこなしていくうちに、特許制度というものがどういうものかが分かってきますし、自分で翻訳した明細書がどういった視点で見られているのか、ということも分かってきます。

​​​​​​​葉山:
なるほど。いわゆるOA 「オフィスアクション」ですね。OAの場合、翻訳者さんにとっては原稿の文字数だけで翻訳料金を設定されたくないでしょうね。やはり背景を全部読み込む必要がありますし。


糸目:
はい(笑)。原稿は一枚でも、流れを追ってから翻訳しなければいけません。


翻訳業界から見る知財業界

葉山:
業界に対する私の印象を述べさせていただきますと、やはりお客様ご自身が弁理士の方だったりして、直接我々とやり取りさせていただくので、きっちり勉強されてこられた方が多いといいますか、あまり破天荒なイメージはないですよね。真面目な方というか、きっちりした方が多いのかな、と感じています。

ですからこちらも、身だしなみなどもそうですし、訪問の際は気を引き締めて行くようにはしています。良くも悪くも保守的っていうイメージがあります。傾向としては「慎重」な方が多くて、敢えて新しいものを進んで取り入れようとはしない方が多いとも感じます。

糸目:
仕事内容は最先端の技術に触れているのに、事務所自体は非常に保守的いう印象は否めないと思います。やはり依頼元であるメーカー企業のお客様の代わりに法律的な手続きをされているので、新しいからと飛びついて失敗してしまうと、お客様にとっては億単位の損害になってしまうこともあるので、そこは慎重にならざるを得ないのかなと思っています。


葉山:
おっしゃる通りですよね。私は17年ぐらい翻訳業界にいますが、業界に入りたての頃はもう、特許事務所に飛び込みで営業を仕掛けて、お仕事をいただいたら納品のときはまだフロッピーとハードコピーを「できましたっ」て持参していました(笑)。

応接間に通していただいいて弁理士の先生方や、外国事務のご担当の方がその場でレビューしてくださって、いろいろご指摘をいただいたりしてすごく勉強になりました。今思えばすごく貴重な経験だったと思っています。 

今はいろいろ便利になり、これから翻訳会社で営業をする人は、そういう機会がなくなってくるかもしれません。業界全体として時代の流れに乗っている部分ももちろんありますが、たとえばIT業界のお客様に比べますと、やはりその感覚にはまだ大きな違いがあるのかな、と感じます。

営業をする中でまず違いを感じるのは、料金の計算方法ですかね。未だに原文ではなく仕上がりワード数換算でご請求するのは、知財業界だけですよね。
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糸目:
そうですね。日本国内のお客様はまだ仕上がり換算での請求が多いですね。たまに特許でも原文換算のお客さんもいますけど、まだ仕上がり換算が多いです。


②に続く

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