
英日翻訳における「誤訳を招きやすい単語たち」 パート4-意外と間違える「copy」の意味
川村インターナショナルで社内翻訳者として勤務している筆者は、業務上、ほかの翻訳者の方の訳文をチェックする機会が多くあります。そして、いろいろな方の訳文に触れていると、誤訳しやすい単語やフレーズというものが見えてきます。
実際の訳文でよく目にする誤訳を紹介して、誤訳を少しでもなくしていこう!という本ブログシリーズ。今回は第4弾をお届けします。第1弾はこちら、第2弾はこちら、第3弾はこちらからどうぞ。
目次[非表示]
- 1. in confidence
- 2. Get your copy
- 3. 川村インターナショナルのサービス
in confidence
突然ですが、次の例文を訳してみてください。
I told him about it in confidence. |
この文を「私は自信を持ってそのことを彼に話した。」と訳した方は、ぜひこのままブログを読んでいただければと思います。
「自信」や「信頼」「信用」などが代表的な意味の confidence 。これに前置詞のinが付くと、「内緒で」とか「秘密で」という意味になります。そして、in confidence の誤訳として多いのが、もうお分かりですね、「自信を持って」です。産業翻訳、特にマーケティングの案件では、「自信を持って」を意味する with confidence を目にする機会が比較的よくあります。そのため、in confidence となっていても、ついうっかり「自信を持って」と訳してしまうのかもしれません。
「機密情報」などを意味する confidential はおなじみの単語だと思いますが、confidence はその名詞形で、先述の「自信」「信頼」「信用」のほかに「打ち明け話」や「秘密」という意味もあります。
in confidence も、ほとんどの辞書で confidence の項目に意味が載っているので、翻訳の基本、「知っている単語ほど辞書を引く」を忘れないようにしましょう。
そんなわけで、冒頭の例文の正しい訳は、以下のようになります。
I told him about it in confidence. 私は内緒で彼にそのことを話した。 |
Get your copy
次は特定の文脈で使用される copy の訳についてです。copy はカタカナで「コピー」として使用されるほど日本語でも浸透している単語ですが、文脈によってはそのまま「コピー」や「複製」と訳してしまうと誤解を招いてしまうことがあります。例えば、企業のホームページなどで見かける表現に、Get your copyというフレーズがあります。
【例文】 1. Don't miss out – get your copy of the eBook for free! 2. Interested in learning more? Get your copy of the full guide here. |
このような文脈で、Get your copyを「eBook/完全版ガイドのコピーをダウンロード」や「eBook/完全版ガイドの複製をダウンロード」と訳してしまうケースがみられます。これだと、読み手によっては、「本物ではないコピーの資料」という意味にとられてしまう可能性があります。これでは正しい訳とは言えません。
実はCopyには「コピー」や「複製」のほかに、本や雑誌などの単位を表す「部」や「冊」という意味もあります。
【例文】
私はその本が3冊必要です。 |
Get your copy の copy は、この「冊」や「部」という意味なのですが、例えば最初の例文1を「eBookを1部ダウンロード」としても日本語ではこんな言い方しないですよね。端的に言うと、この場合の Get your copy は、「eBookをダウンロード」と言っているのです。つまり、最初の例文の正しい訳は、以下のようになります。
【例文】
お見逃しなく – eBookを無料でダウンロード! もっと詳しく知りたい方は、こちらから完全版ガイドをダウンロード! |
これだと、eBook やガイドそのものがダウンロードされる、ということが読み手にもしっかりと伝わるはずです。
この意味のcopyは、CDでも使われます。例えばアーティストが新作アルバムのプロモーションでよく使うのが ”Make sure to get a copy!” というフレーズですが、これは「アルバム買ってね!」という意味になります(デジタルが基本の今の時代でもこのフレーズが使われているのか、日本に住む筆者には定かではないのですが……)。
Get your copy はマーケティングの翻訳案件でよく見かけるフレーズなので、「コピーをダウンロードする」という意味ではないということを覚えておきましょう。また、CDの例を見ても分かるとおり、文脈に応じて意味が変わってきます。読み手に誤解を与えないよう、その時々の文脈に応じて適切な訳語を選ぶように気をつけましょう。
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