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【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.15 インフルエンザ

【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.15 インフルエンザインフルエンザと風邪(Common Cold)の違い

インフルエンザも通常の風邪もウイルス感染症であり、インフルエンザは風邪のひとつと思ってよい。

ただし、風邪はライノウイルスやコロナウイルス、一方、インフルエンザはインフルエンザウイルス(A,B,C)による感染症であり、風邪は、誰でも年に何回か引いて、数日でよくなるのに対し、以下の点が大きく異なる。

  1. しばしば、世界的に流行する。(pandemic)
  2. 通常の風邪よりも重症となることがある。
  3. 高齢者では死に至るケースも少なくない。

インフルエンザ流行の歴史

15~19世紀の間、世界的インフルエンザの流行とわが国で大流行した風邪の記録を比較してみると、両者は、時間的ずれはあるが、よく一致している。

※富士川 遊:日本疾病史 p140, 1944 日本醫書出版 から引用

これらの、世界的に大流行し、日本でも流行した風邪は、おそらく、インフルエンザであり、ヨーロッパで流行後、日本に入ってくるまでの期間は15~16世紀頃は10年近くかかっていたが、19世紀には1~2年に短縮されている。また、大流行は、西から東への方向がほとんどである。

第一次世界大戦中(1915~1918) 、アメリカで発生した新型インフルエンザはヨーロッパへ渡り、世界中に広まった。通称、スペイン風邪(Spanish Flu)と呼ばれるこのインフルエンザの病原体は、それまで人類がおそらく遭遇したことがないトリインフルエンザウイルスであり、死者は全世界で5,000万人、日本で39万~46万人と推定されている。「八重の桜」にも出てくる大山 巌夫人 捨松も1919年スペイン風邪で亡くなった。映画「心の旅路(Random Harvest),1942」でも主役のスミス(Ronald Colman)がスペイン風邪で倒れるシーンがある。蛇足であるが「心の旅路」は、現在でもロマンチックで心が温まる名作であり、まだ見たことがない人には、レンタルDVDでもよいから、是非推薦したい。

インフルエンザの問題点

元来、動物(トリ、ブタ、ウシなど)の感染症で、ヒトには無害だったウイルスが、なんらかのきっかけで突然変異を起こし、ヒト病原性を獲得すると、ヒトにとっては未経験の病原体による感染となるため、無防備状態で病状は重症化し、感染は一挙に世界中に広まる危険がある。スペイン風邪はおそらく人類が初めて遭遇したウイルスであり、ヨーロッパ戦線のアメリカ軍戦死者の80%は戦闘死ではなく、スペイン風邪が原因だったと推定されている。ドイツ軍でも病死将兵数は急増、攻撃は頓挫、戦闘継続は実質的に困難となり、大戦の終焉は早まった。

ウイルスの突然変異は、地震と同様、必然であり、今後も、トリ、ブタなどのウイルスがヒト感染性を獲得、世界中に広まる危険性は常に存在する。

現在のインフルエンザは、亜系はあるが、何世紀も前から人類が遭遇しているウイルスであり、スペイン風邪のような新型亜系の場合は、若い人でも死亡者が多かったが、現在は、インフルエンザによる死亡例は高齢者層に集中している。平成12年以降、わが国のインフルエンザによる死亡例は約90%が65歳以上である。

インフルエンザワクチンの接種効果と目的

インフルエンザワクチンの予防接種は、

  1. 感染の予防
  2. 感染しても重症化と死亡を防ぐ

の二つの効果がある。

とくに65歳以上の高齢者では、感染自体の予防効果は若い人ほど期待はできないが、感染後の重症化を防ぐ効果は認められている。ワクチン接種後、抗体価が上がって予防効果が出現するまでには2週間はかかるので、11月から12月初旬までに接種は済ましたほうがよい。

インフルエンザ流行のピークは大体1~2月である。

毛利昌史

毛利昌史

東和病院名誉院長。東京大学医学部医学科卒業。米国ミネソタ大学留学(フルブライト留学生)ミネアポリス市Mount Sinai Hospital勤務。帰国後、東京大学第二内科助手、東京大学医学部附属病院中央検査部講師、三井記念病院呼吸器センター内科部長などを歴任し、平成15年に国立病院機構 東京病院名誉院長に就任。その後化学療法研究所付属病院院長、東和病院院長を経て現在は東和病院名誉院長。

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