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循環器疾患(Cardiovascular System)の主訴 (2)

失神(Syncope)

失神(syncope)の定義は、一過性の意識喪失である。ここでは、失神を循環器疾患の症状に分類したが、失神を訴える疾患は、精神疾患を含め多岐にわたる。失神の原因として、もっとも多いのは、一過性脳血流低下(transient global cerebral hypoperfusion) による意識喪失で、立位だった場合、患者は、体位を維持できなくなるため、崩れ落ちるように倒れる。しかし、ほとんどの場合、倒れた後10-20秒程度で覚醒し、後遺症も残さない。朝礼や卒業式などで、学童が突然倒れることは、多くの人が実際に見聞きしたことがあると思うが、原因は、体位性血圧低下(orthostatic hypotension)による一過性脳虚血で、頭を低くするように寝かせることにより、脳血流は正常化し、意識も回復する。しかし、周囲のひとが支えて、倒れないように立ったままの状態を維持すると、脳虚血が持続、最悪の場合は致命的となる。公衆電話で通話中に体位性低血圧により倒れたひとを、たまたま通りかかったひとが見つけて、倒れないよう支え続けた結果、死亡したという報告があるが、善意で助けようと思ってしたことが、逆に命取りとなる例のひとつである。
高齢者で、急に立ち上がると、失神、めまい、目の前が暗くなるなど、一過性脳虚血障害(Transient ischemic attack, TIA)を訴えることはよくある。原因は、頸動脈や椎骨動脈などの動脈硬化による狭窄性病変による一過性の脳血流障害である。ただし、このような立ちくらみは、健常者でも起きることはある。


1) 原因(Etiology)

血管迷走神経反射(vasovagal reflex)
咳発作による失神(咳失神(cough syncope))もこの中に入る。

体位性低血圧(orthostatic hypotension)
動かずに立位を維持していた時に生じる一過性脳虚血

神経疾患(neurologic disease)

心疾患(cardiac disease)

その他
例:精神疾患(統合失調症、ヒステリー) 本当の失神発作では、倒れた時に怪我をすることがあるが、ヒステリーなど詐病で倒れる場合、患者が傷つくことはない。映画「若草物語」(1949)で、Elizabeth Taylerが演じるAmyが、あらかじめクッションを置いてから倒れるシーンは、その典型である。


2) 鑑別診断(Differential Diagnosis)

鑑別診断は、前述の病因とほぼ対応するが、④の心疾患による失神(心原性失神)は、致命的となる可能性があるので、見逃してはならないし、迅速に対応する必要がある。以下、心原性失神について述べる。

心原性失神の鑑別

心臓弁膜症 例:大動脈弁狭窄(Aortic stenosis)

心タンポナーデ(Cardiac tamponade)
→心外膜腔に水が貯留、もしくは心外膜が固くなり、心室が拡張できない状態となること

急性心筋梗塞(Acute myocardial infarction, AMI)

左房粘液腫(Left atrial myxoma)

肥大型心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy)

解離性大動脈瘤(Dissecting aortic aneurysm)

肺塞栓(Pulmonary embolism)

心室性頻脈(Ventricular tachycardia, VT)

心室性不整脈

完全房室ブロック(Complete A-V block)

毛利昌史

毛利昌史

東和病院名誉院長。東京大学医学部医学科卒業。米国ミネソタ大学留学(フルブライト留学生)ミネアポリス市Mount Sinai Hospital勤務。帰国後、東京大学第二内科助手、東京大学医学部附属病院中央検査部講師、三井記念病院呼吸器センター内科部長などを歴任し、平成15年に国立病院機構 東京病院名誉院長に就任。その後化学療法研究所付属病院院長、東和病院院長を経て現在は東和病院名誉院長。

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