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【第1回】MDR/IVDR改正提案を読む-Annex VIII分類ルールの変更点

【第1回】MDR/IVDR改正提案を読む-Annex VIII分類ルールの変更点

Annex VIII分類ルールの変更点 ― COM(2025) 1023 final(2025年12月16日)
 Annex VIII提案内容全訳ダウンロード資料つき 

 

2025年12月16日、欧州委員会はMDR(医療機器規則、Regulation (EU) 2017/745)とIVDR(体外診断用医療機器規則、Regulation (EU) 2017/746)を改正する提案、COM(2025) 1023 finalを公表しました。本提案は、規制枠組みの効率化および将来への適応性確保を目指しており、その主な目的は、公衆衛生の高度な保護および患者の安全性を維持しつつ、適用される規則の簡素化、製造業者の行政負担の軽減、ならびに通知機関(Notified Body)による認証手続きの予測可能性とコスト効率の向上を図り、もって規則が本来掲げる目的の達成を支援することにあります。

本シリーズでは、この提案の主な変更点をテーマごとに3回に分けてご紹介します。なお、これは2025年12月16日公表時点の「提案」であり、今後の欧州議会・理事会での審議を経て内容が変わりうる点に、あらかじめご留意ください。

第1回となる今回は、医療機器のリスク分類を定めるAnnex VIII(分類ルール)の中でも、実務への影響が大きい2つの変更 ―「再利用可能な手術器具」と「能動植込み型機器のアクセサリー」の扱い ― を取り上げます。 

 

目次 [非表示]

背景:なぜ分類ルールが見直されるのか

提案の前文(Recital)29には、次のように記載されています。

Devices are classified in different classes depending on their level of risk. Some of the classification rules should be adapted to reflect the inherent risk of devices, resulting in a lower risk classification, such as for reusable surgical instruments or accessories for active implantable devices.
(機器はそのリスクレベルに応じて異なるクラスに分類される。一部の分類ルールは、機器の本来のリスクをより適切に反映するよう調整されるべきであり、その結果、再利用可能な手術器具や能動植込み型機器のアクセサリーなどについては、より低いリスククラスとなる。)

つまり、今回の分類ルール変更は「実際のリスクの大きさに比べて、現行の分類が過大である」という認識に基づくものであり、規制の予測可能性向上とコスト削減を狙った「比例性(proportionality)」の見直しの一環です。 

 

変更点①:再利用可能な手術器具(Reusable surgical instruments)

現行MDR Annex VIIIのRule 6(Section 5.2、一時的使用の侵襲性機器)は、原則Class IIaとしつつ、心臓又は中枢循環器系の欠陥をその身体部位との直接接触を通じて制御、診断、監視又は是正することを特に意図している場合や、心臓若しくは中枢循環器系又は中枢神経系と直接接触して使用することを特に意図している場合など[1]のいずれかに該当する場合はより高いクラスに格上げする、という構成になっています。

短期使用の機器について定める現行のRule 7(Section 5.3)も類似の構成であり[1]、加えて、再利用可能な手術器具に関する例外規定そのものが存在しません。

これらの規定が同一機器に複数当てはまる場合、Annex VIII Chapter II Section 3.5により、最も高いクラスとなる規定が優先されます

3.5. If several rules, or if, within the same rule, several sub-rules, apply to the same device based on the device's intended purpose, the strictest rule and sub-rule resulting in the higher classification shall apply.
(複数の規則、又は同一規則内の複数のサブルールが、当該機器の意図された目的に基づき同一の機器に適用される場合には、より高いクラスとなる、最も厳格な規則及びサブルールを適用するものとする。)

したがって現行の規定では、一時的使用の侵襲性機器が「再利用可能な手術器具」に該当する場合はClass Iに分類する旨の規定があるものの、その機器が同時に「心臓・中枢神経系等への接触」という要件も満たす場合は、Section 3.5により、より厳しいClass IIIが優先されることになっています。

提案では、Rule 6・Rule 7の双方に、次の一文を追加・置換します。

'are reusable surgical instruments regardless of the body part with which they come into contact, in which case they are classified as class I;'
(接触する身体部位にかかわらず、再使用可能な手術器具である場合。この場合、クラスIに分類するものとする。)

これにより、再利用可能な手術器具のうち、一時的使用(Rule 6)・短期使用(Rule 7)を問わず、現行MDRでClass Ⅲに引き上げられていた心臓・中枢神経系等に接触するものについての規定は撤廃され、Class Iに統一されます。

[1] Rule 6・Rule 7には、心臓・中枢神経系等への接触以外にも、電離放射線によるエネルギー供給、生体作用又は吸収性、危険性のある薬剤投与システムによる投与といった条件でもより高いクラスに格上げされる規定がある。ただし、今回の提案はこれらの条件には関係せず、身体部位への接触を理由とする格上げのみを対象とする。

 

変更点②:能動植込み型機器の付属品(Accessories to active implantable devices)

現行MDR Annex VIII、Chapter II(実施規則)Section 3.2には、すでに次の原則が存在します。

3.2. ... Accessories for a medical device shall be classified in their own right separately from the device with which they are used.
(医療機器の付属品は、それらが使用される機器とは別に、それぞれ独自に分類するものとする。)

しかし、現行のRule 8には次の規定があり、能動植込み型機器の場合は本体だけでなく、その付属品も一律Class IIIに分類するという例外規定が明文で存在しています。

— are active implantable devices ** or their accessories**, in which cases they are classified as class III;

これにより、例えば設定用リモコンや外部プログラマー、充電器のような付属品までClass IIIとして扱われてきました。

提案では、この一文が次のように改正されます。

— 'are active implantable devices, in which cases they are classified as class III;'

「or their accessories」の部分が削除されます。これにより、能動植込み型機器の付属品はRule 8による特別扱いがなくなり、Section 3.2の一般原則(付属品自体のリスクに応じた独自の分類)に従うことになります。

 

付録資料

Annex VIIIの提案内容は以下の通りです。(抜粋)

原文

対訳

Annex VIII is amended as follows:

附属書VIIIを次のとおり改正する。

(a) Section 3.2 is replaced by the following:

'3.2 If the device in question is intended to be used in combination with another device, the classification rules shall apply separately to each of the devices.

Accessories for a medical device and accessories for a product listed in Annex XVI shall be classified in their own right separately from the device with which they are used.';

(a) 第3.2節を次のとおり置き換える。

「3.2 当該機器が他の機器と組み合わせて使用されることを意図している場合、分類規則は各機器にそれぞれ個別に適用するものとする。

医療機器の付属品及び附属書XVIに列挙する製品の付属品は、それらが使用される機器とは別に、それぞれ独自に分類するものとする。」

(b) in Section 4.2, first paragraph, the second indent is replaced by the following:

–'if they are intended for use for channeling or storing blood or other body liquids or for storing organs, parts of organs or body cells and tissues, except for blood bags; by derogation from any other classification rule, blood bags are classified as class IIb.';

(b) 第4.2節の第1段落の第2インデントを次のとおり置き換える。

–「血液バッグを除き、血液その他の体液の移送又は貯蔵のため、又は臓器、臓器の一部若しくは身体の細胞及び組織の貯蔵のために使用することを意図する場合。ただし、他のいかなる分類規則にかかわらず、血液バッグはクラスIIbに分類するものとする。」

Annex VIIIについての提案内容全文は以下のリンクからダウンロードできます。 

資料はこちら

 

まとめ

Annex VIIIにおける今回の2つの変更 ― 再利用可能な手術器具について身体部位への接触を理由とした格上げの見直し、そして能動植込み型機器のアクセサリーを一律Class IIIとしていた例外規定の見直し ― は、いずれも「機器の実際のリスクに見合わない過大な分類を是正する」という、今回の提案全体を貫く比例性原則の具体例と言えます。

次回(第2回)は、認証手続きの合理化 ― 通知機関の関与縮小と証明書有効期限の撤廃 ― を取り上げます。

※本記事の内容は掲載時点の情報に基づいており、法規制の改正等により最新の状況と異なる場合があります。また、本翻訳は公式な正文ではなく、理解を補助するための参考資料です。

※本ページの利用により生じたいかなる問題についても、当社は責任を負いかねます。実務への適用にあたっては、必ず原典となる法令・公式文書をご確認ください。

 

出典

現行MDR(本文およびAnnex)
改正提案:COM(2025) 1023 final

 

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