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【特別鼎談企画】これからの翻訳業界(10の質問)④


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目次
「2020年の東京オリンピックに向けて」
「翻訳・ローカリゼーションの市場は、成長産業か」
「機械翻訳の成長率」
「今後若い世代の翻訳者の参入は」
「翻訳作業時間の減少」
「今後の人材確保」
「働き方改革」
「これからの翻訳業界」


今後若い世代の翻訳者の参入は

(森口) 次の質問にいかせていただきます。ちょっと毛色が変わります。

④ 2017年に一般社団法人日本翻訳連盟(JTF)が実施した白書の中で、個人翻訳者の年齢に関する統計が示されました。これによると、4年前に比べて、翻訳者の年齢層はそのまま横にスライドした(つまり4年年齢を重ねた)だけで、若い世代が参入していないようにも思えます。これについて自社でも同様の傾向はありますか。また、若い世代が参入できていないとすると、どこに問題があると思いますか。
出典:「2017年翻訳白書」https://www.jtf.jp/jp/useful/report.html

(森口) 『翻訳白書』を見ていて思った統計がありまして、まず1つ目が個人翻訳者の年齢です。前回日本翻訳連盟(JTF)が『翻訳白書』を作成したのが2017年で、それが最新のものになりますが、4年前に比べて翻訳者の年齢層がそのまま横にスライドしたように見えます、つまり、そのバーチャートでいくと下のほうが2013年で、もともと20代の層が20%弱いたのが、5%ぐらい減りまして、そのまま30代の層に5%とはいいませんが、4%ぐらいスライドしていったという感覚があります。

 これをぱっと見るととても怖くて、20代の人が比率として減っています。母数自体は増えていますが、翻訳白書の存在を知り、回答に協力してくださった人が増えたのでしょうから、必ずしも業界の中の翻訳者が増えているという意味ではないと思います。やはり日本の高齢化社会というものが背景にあるのかもしれませんが、若い世代が入ってこないというのは、成長産業なのに心配じゃないでしょうか。

(稲垣) 私が思ったのは、やはり翻訳の仕事が魅力的ではなくなったのかなということですね。

(森口) それはなぜでしょう。

(稲垣)やっぱり翻訳の価値の問題じゃないでしょうか。10何年前に比べて翻訳の単価は上がってないですよね。逆に売るほうの単価は下がっていて、価値が低くなってきているのではないでしょうか。英日翻訳でいえば、英語ができる人が増えてきたことで誰でもできると思う人が増えちゃったっていうところがあるのではないかな、と。本来はもちろんプロでなければできない仕事なのですが。また、物価も上がってきて、経済が上向いて他の業界や大企業の給与レベルも上がり、英語ができる人材の需要が高まってきているので、翻訳を仕事として選ぶ人が減ってきているのかなと思ったりしますけど、どうでしょうか。

(森口) グローバリゼーションのことを先ほども言いましたが、翻訳の業界はひょっとして早かったのかもしれませんね。つまり、グローバル化という言葉が浸透するずいぶん前からグローバル競争の世界に飛び込む必要があったのが翻訳の業界なので、価格競争が厳しいのかなというのは思ったんですが。新比惠さんはどう思われますか。

(新比惠) 私は医薬の翻訳者しか知らないですが、医薬以外の翻訳は、若い人でも、大学を出たばかりの20代でもできるんでしょうか。

(稲垣) 英語力と日本語表現力があれば、分野によってはやろうと思えばできるけれども、仕事があるかどうかはわからないし、専門的な内容であればその分野の知識量も必要ですし、プロとして独立するのはなかなか厳しいと思います。

(新比惠) そうですよね。医薬翻訳の分野は、大学を出たらできる仕事だというわけではまったくないので、経験と専門性をある程度勉強して準備しないと仕事がこないんです。最近では、以前よりさらに難易度も上がってきているように思います。

 たとえば、私たちが学生時代に習った薬理学や免疫学といまの薬学では全く違いますし、翻訳の難易度も違います。昔は文献を和訳できればいいような仕事がありましたが、いまはそんな仕事も少なくなりました。

 医学翻訳は、そもそも、20代の経験の浅い人に簡単にできる仕事じゃないと思うんですよね。だから、当然かなというか、私はこの統計は自然に受け止められました。


(川村) 結局、いま、ライオンブリッジさんなんかはグローバル企業で大きな組織ですが、中小の翻訳会社が群雄割拠しているみたいな状況ってありますよね。 そうすると、そこで委託されている翻訳者の方たちはたぶんその翻訳会社とも長い付き合いで、年齢も上がってきていても、品質もある程度安定していると思うんです。そうすると、翻訳会社自体が成長しないと、そこに新しく若い翻訳者の人たちを入れる余裕がないから、いままでの人たちと一緒にやっているというのも1つあると思います。

 それからもう1つですが、本当にいい翻訳をやってくださる人たちって、必ず専門の知識を持っているじゃないですか。専門の知識を持っていて、語学ができる方は、専門の知識のところに行ったほうが儲かると思うんです、絶対に。

 それで、専門の知識を必要とする、例えばエンジニアであればエンジニアが活躍できる企業やメーカー、そういうところに行った後に、定年になる前に翻訳をやろうとする人がけっこう多いんじゃないでしょうか。


(新比惠) けっこう多いですよね。

(川村) そうするとけっこういい翻訳者になりますよね。

(新比惠) そうなんです。専門性だけではなく、社会性も高いですし、色々な面でとても優秀です。

(川村) だから、この職種自体、若い人が入ってきたとしても訓練期間がけっこう長くかかるし、しかもその間はお金を稼げないので、この業界で自分が一人前になるっていう、一人前になるトレーニングをするという業界ではないんじゃないかなと思います。

(稲垣) 欧米では翻訳学をメジャーにできる大学がたくさんありますが、日本では立教大学など非常に限られています。そして、そこを出ても必ずしも翻訳者を選択しないということもあります。

 いろいろな翻訳会社さんも翻訳学校を運営されていたりしますが、勉強だけでいい翻訳者になれるかというとそうではなく、実務経験を含め、いろいろな専門知識が必要となってきます。うちも腕の良い翻訳者さんに出会うのにとても苦労しています。


(川村) 例えば三菱重工に何年いて、航空機を作っていましたといって、航空機の翻訳は私に任せてくださいと、海外に駐在もしていましたっていったら、翻訳学校で勉強して翻訳会社に入った人よりも信頼感は高くないですか?語学力があるという前提ですが。

(稲垣) 前提でね。

(川村) それでも全然ダメな人もいますが、技術的知識に関しての信頼度はそちらのほうが高いですよね。

(稲垣) たしかにそうですね。そこってなかなか勉強で培えるようなものではないですから。

(川村) 勉強だけではね。

(森口) では、「もっと勉強してから来い」と(笑)。

(川村) だから、定年になってからでも遅くはないということかな。

(新比惠) そんな人がいいですね。

(森口) 翻訳というのは在宅でできるビジネスですから、定年後に翻訳者になっても決しておかしくはないということですか。

(川村) 定年までどう過ごしたかというところが非常に問題でしょう。例えば今はやりのAIとか最先端の技術にずっと関心を持つことができないと、追いついていけません。新しいことを考えながら、技術に対する知識もあって、語学が強いという人はいいですよね。ただ、体力は衰えてくるでしょうけど(笑)。

(稲垣) あと、ITリテラシーの問題はあると思います。語学や専門知識だけでも翻訳者にはなれません。いまはツールなしには翻訳の仕事ができません。機械翻訳を活用したり、単純にファイルをダウンロードしたりでもそうですし、プロセスもTMSを使って自動化されていますから、ファイル管理だけでも大変ですし、リテラシーが低いとなかなか難しいです。

(森口) いわゆる翻訳支援ツールといわれているものが悪影響だというふうにおっしゃる人もいます。

(稲垣) います。

(森口) やはり、使っていく方向が主流なんでしょうか。

(稲垣) 産業翻訳ではそうじゃないでしょうか。

(川村) 使わなければビジネスとして成り立たないと思います。

(稲垣) やはり、人間だと間違いますし、過去のものを参照するのにすごく時間がかかったりしますので。

(森口) 個人の生産性や効率を考えると、従来のやり方でいい部分もあるかもしれませんが、グローバリゼーション全体の市場で見たときに、競争が激しいと考えると、全体の中で最適なプロセスのほうがいいということでしょうか。

(稲垣) そうですね。

⑤に続く

【インタビュアー】森口功造

【インタビュアー】森口功造

株式会社川村インターナショナル常務取締役。ISO TC 37 国内委員として、主にISO17100およびISO18587の策定に関わる。機械翻訳エンジンの活用や翻訳関連の標準化推進に注力。

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