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【特別鼎談企画】これからの翻訳業界(10の質問)③



目次
「2020年の東京オリンピックに向けて」
「翻訳・ローカリゼーションの市場は、成長産業か」
「機械翻訳の成長率」
「今後若い世代の翻訳者の参入は」
「翻訳作業時間の減少」
「今後の人材確保」
「働き方改革」
「これからの翻訳業界」


機械翻訳の成長率


(森口) では、次の質問です。
③ 一方で、P&S Market Research社の調査によると、機械翻訳の市場は、年平均成長率が6%で、2023年までに200億円まで成長すると予測されています。

(引用)Machine translation market is forecasted to witness a CAGR of over 6.0% during the period 2017–2023 to reach $195.4 million by 2023
出典: (https://www.psmarketresearch.com/market-analysis/machine-translation-market)


(森口) 次は機械翻訳に関係してくるのですが、P&S Market Research社の調査によると、機械翻訳の年平均の成長CAGRが6%だといっています。2023年までに約200億円まで成長すると予測されています。

 これを見て「あれっ?」と思いました。つまり、人手の翻訳の仕事はとても成長している感じに見えますが、機械翻訳は6%と、成長率としては同じぐらいなのかもしれませんが、成長していったとしてもまだ200億円かと。つまり、ぜんぜんカバーしきれていないという感覚があります。

 これについて、この統計を正しく理解しようとすると、翻訳市場全体のボリューム増に追いついていないように見えます。この点についてどうお考えでしょうか。

(新比惠) 機械翻訳の年成長率と翻訳業界の年成長率はあまり変わらず、有意差がないようなので、翻訳市場全体のボリューム増に追いついていないというよりも、やはり、現状で翻訳市場における機械翻訳の割合が低く、今後もそれほど変化がないというふうに予測されているということではないでしょうか。しかし、機械翻訳は未知の部分が多く、根拠はありませんが、6%よりももっと大きくなりそうな気がしています。ですから、この数字は意外でした。こんなに少ないのかなと。

(森口) 統計の対象にしている部分がどこなのかというところは細かく見なければいけないでしょうね。おそらく機械翻訳を提供したサービスプロバイダだけの話だと思います。そこから、例えば付加価値や別の形態に変わったサービスについてはどこまで含められているのかということは正直疑問ではあります。

(稲垣) たぶん、これは機械翻訳エンジンのプロバイダの成長や、その市場ということだと思います。このローカリゼーションの5兆というのはもっともっと多様な内容が含まれていますし、もちろん機械翻訳を使って翻訳をしたというところはこの機械翻訳の市場には入っていないのではないかと思います。

 そういう意味ではこの市場規模はそんなもんなのかなという気はします。それに機械翻訳エンジンは開発にかなりの予算が必要でなかなか簡単に提供できるものではないので、提供者はだいたい決まっていますよね。


(森口) 見方を変えると機械翻訳を提供する側の市場はそうかもしれないけれども、機械翻訳を活用したビジネスはもっとあるのかなと。実際にそうでしょうか。

(稲垣) もちろんそうじゃないでしょうか。機械翻訳も単純なテキストの翻訳だけではなく、ボイス関係やそういったものにもどんどん広がっていますしプロバイダもたくさん出てきています。研究も進んでいることと思いますし、そのサミットである「MTサミット」も去年は名古屋大学で行われていました。やはりどんどん技術が発達していって、いろいろな用途で使われるようになってくるのではないかと思います。

 先日、北海道に行ったとき、小樽のお寿司屋さんに行ったんですが、お寿司屋さんのご主人が音声翻訳の端末を持っていて、お客様とそれを使って会話していました。
​​​​​​​

(森口) 北海道は観光客が多いですもんね。

(稲垣) そうなんです。それで、中国の方、韓国の方がすごく多いということでいろいろなトラブルやらコミュニケーションの必要やらがあったりしたことから購入されたそうです。日本全国といいますか、観光地でもそういうものが普通に使われるようになってきました。

(川村) 普通のひとが「あのお寿司、何?」と全部1つ1つ説明できませんよね。それは便利ですね。

(稲垣) 便利です。小樽のお寿司屋さんでそういうものが出てきたときにはびっくりしちゃいました。ここまで浸透しているんだなと、商用に値するというか、そういった技術がそこまで進んでいると実感しました。

(森口) 音声翻訳の例は、わかりやすいですね。医療分野では機械翻訳は活用されているイメージはあまりありませんが、新比惠さん、どうでしょうか。

(新比惠) 聞きませんね。でも、先ほどの小樽の話の続きで、主人が先日オランダの美術館かどこかで、あまり整理されていない古い展示物の多い美術館で、英語の解説もなく、オランダ語の解説しかなかったのですが、スマホでぱっと撮って……。

(森口) QRコードで読んで。

(新比惠) そうです。それで翻訳しながら簡単にすべての解説を読むことができ、すごいなと思いました。

(森口) QRコードを読むと、オランダ語から使っているOSを認識して、英語のOSを使っていれば英語で表示するということができる技術がありますよね。QR TranslatorというサービスとしてPIJINさんが展開されています。

(川村) 機械翻訳にまつわるいろいろな仕事があって、先ほどもお話ししましたが、例えば辞書を作ってくれとか、コーパスを作ってくれとか、そういう仕事がうちの会社にも来ていますし、ライオンブリッジさんにも来ていますよね。そういう仕事の市場はけっこうこれからあると思います。

 いま、日本の大手企業さんや外資の医薬品の企業さんがものすごく興味を持っています。これは又聞きですが、あるソフトウェアの会社が本当は翻訳したいもののほんの数%か何か、ほんの少ししかしていなくて、あとの90%以上は手が付けられていないと、そういう会社が何に飛びつくかというとやはり自動翻訳・機械翻訳ですよね。ですから、市場としては非常にこれから伸びていくと思っています。

 ところが、それがずっと伸びていくと、言語サービスを提供している会社の将来はどうなるのか、ダメになってしまうんじゃないかという話もありますが、私はそうは思っていません。やはり、どんなにAIが進んでも、人間がしなければいけないところはあります。どんなところでもそうだと思います。そこに入れるサービスを持っていれば生き残っていけると思います。


(森口) いま2つ興味深い話がありました。コーパスを作るというところでいうと、人が翻訳をする分野なのかどうか、つまり機械学習をさせるデータというのは、やはり人が翻訳したものが使われるべきだと私は思っています。

(稲垣) 機械に正解を与えていかなければいけないのですから、その「これが正解」というものを決めるのは誰かというと人間です。

(森口) その正解を間違ったものを機械学習させれば当然質が悪くなる?

(稲垣) そうです。だから、そこが人間の力の入れどころだと思います。最後の品質を決めるのは人間ということです。

(川村) それを繰り返していって、将来は機械が全部、人間が決めた正解をどんどん学習していって、そうして最終的にはどうなるのかなとは思いますね。

(稲垣) それはまだそんなに近い将来ではないと思いますが。

(森口) もう1つは、比率はわかりませんが、なぜそこまで翻訳できないコンテンツがあるのかということです。企業側にはもともと決められた予算があって、その予算はそう簡単に増えるものではないのかなと思います。その中で、コンテンツは増えている。先ほど、医療の業界では行政的な取り組みもありましたよね。

(稲垣) SNSもそうですよね。みんな発信したがっています。みんな口コミです。ですから、情報量は膨大です。それをいろいろな言語で理解したいとか、世界中にそういうものを発信していきたいということになると、やはり翻訳が必要になります。

(川村) ビジネスは、やはり絶対母国語で発信されたところのものは売れるというのがあって、ですからECサイトでも何でも、英語で書かれているよりも例えばアラビア語で書かれているほうが絶対に売れるということがわかってきているので、どんどん、競争になってきているのではないかと思います。

(森口) 最近は、SNSだけではなく、自分が発信するということだけではなく、サービスなどを評価する、いわゆるUser Generated Contents、例えば「価格.com」のようなサービスで、口コミが増えています。そういうものが翻訳の対象になったりしていますか。

(稲垣) いや、どうでしょうね。直接人手で翻訳をしていたらそんなのはスピードが追いつかないですから、機械翻訳を絡めてになるでしょうね……、旅行サイトの口コミ評価では明らかに機械翻訳によるものもありますよね。

(川村) 口コミサイトはそんなに詳しく技術的な話をするわけではなく、「あのとき便利だった」とか、「こういうときにすごく良かった」とか、「この色が良かった」とか、比較的文章としては一般的な文章です。そういうのってエンジンにあっという間にかかりますし、理解もできます。

(稲垣) そして内容がわかればということであればそれほど品質は問わないですし。

④に続く

【インタビュアー】森口功造

【インタビュアー】森口功造

株式会社川村インターナショナル常務取締役。ISO TC 37 国内委員として、主にISO17100およびISO18587の策定に関わる。機械翻訳エンジンの活用や翻訳関連の標準化推進に注力。

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