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【医療翻訳に役立つ基礎知識】No.19 | 呼吸器疾患の主訴(Respiratory System) Vol.2

喀血(Hemoptysis)、血痰(Bloody sputum)

喀血(Hemoptysis)は、肺・気管支からの出血で、痰に血が混じる血痰(bloody sputum)も喀血のひとつと思ってよい。

胃・食道など、上部消化管からの出血は、吐血(hematemesis)で、喀血とは区別する。吐血と喀血の鑑別は、ベテランの医師ならば、病歴聴取のみで通常は可能であるが、はじめての喀血もしくは吐血の患者さんにとっては、どちらかわからないことがある。

喀血はその程度により、

  1. 少量喀血(mild(scant) hemoptysis) 20ml/24hr以下:通常の血痰が該当
  2. 中程度喀血(moderate hemoptysis) 20~200ml/24hr
  3. 大量喀血(massive hemoptysis): 200~600ml/24hr以上

に分類する。

痰に血が混じると誰でも驚きと不安で、病院を受診することが多い。血痰を主訴に来院する患者さんの原因疾患は、気管支炎など、良性の炎症性疾患が頻度的には高いが、肺結核(pulmonary tuberculosis)や肺がん(lung cancer)など、見逃してはならない疾患の可能性は常に配慮する必要がある。


1) 病因(Etiology)

  • 気管支炎(bronchitis) 20~40%
  • 肺がん(lung cancer) 15~30%
  • 気管支拡張症(bronchiectasis) 10~20%
  • 特発性(cryptogenic, idiopathic) 10~20%
  • 肺炎(pneumonia) 5~10%
  • 結核(tuberculosis) 5~15%

わが国では、昭和30年頃まで、喀血=肺結核として、ほぼ間違えなかった。結核は、わが国では減少しつつあるが、血痰を主訴とする患者さんでは、現在も、肺結核は、忘れてはならない重要な鑑別診断のひとつである。

2) 喀血と吐血の鑑別

大量喀血は、結核の全盛期にはよく見られた症状で、窒息による急死もまれではなかった。昭和の代表的俳人石田波郷も昭和43年、清瀬の国立療養所東京病院で、大量喀血により亡くなっている。

結核による喀血は鮮紅色で、吐血は暗赤色から黒褐色に近いことが多いが、その理由は、結核病巣では、気管支動脈と肺動脈の吻合が顕著で、喀血には動脈血が多く含まれるのに対し、吐血は出血後、胃内に溜まり、かなり時間がたってから吐き出されることによる。

3) 鑑別診断

血痰の鑑別診断

  1. 肺がん:とくに中・高年男性、喫煙者では肺がんの可能性は高い
  2. 感染症:急性気管支炎、肺膿瘍(lung abscess)、肺炎、肺結核、肺真菌症(アスペルギルス肺など)
  3. 肺出血:Goodpasture症候群、ベーチェット病、Wegener肉芽腫など

日常の臨床では、血痰を訴える患者の多くは、気管支炎、もしくは気管支拡張症など、良性疾患によるが、肺がんや肺結核の可能性を安易に除外(rule out)してはならない。

血痰が1週間以上続く場合は、喀痰の細胞診(Cytology)と塗抹・培養(Smear and Culture)は原則として3回行う。細胞診は肺がんを、塗抹・培養は肺結核を除外するための検査である。

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毛利昌史

毛利昌史

東和病院名誉院長。東京大学医学部医学科卒業。米国ミネソタ大学留学(フルブライト留学生)ミネアポリス市Mount Sinai Hospital勤務。帰国後、東京大学第二内科助手、東京大学医学部附属病院中央検査部講師、三井記念病院呼吸器センター内科部長などを歴任し、平成15年に国立病院機構 東京病院名誉院長に就任。その後化学療法研究所付属病院院長、東和病院院長を経て現在は東和病院名誉院長。

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