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医薬品・医療機器 翻訳サービス:翻訳に必要な医学的知識 No.2 | 呼吸器の仕組み(後編)

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呼吸器のしくみ(後編)


患者さん(以前はpatient、現在はclientと呼ぶこともある)の診療(Medical Work-up)は、医師の自己紹介から始めて、

1) 観察(General Inspection)、
2) 問診(History Taking)、
3) 診察(Physical Examination)、
4) 鑑別診断(Differential Diagnosis)、
5) 検査(Clinical Examinations):

  • 全血算(Complete Blood Count)、
  • 生化学検査(Blood Chemistries)、
  • 放射線検査(Radiological Examinations)、
  • 超音波検査(Echography)など、

6) 治療(Treatment)方針の決定
の順に進める。

臨床経験が豊富で優秀な医師ならば1)~3)までの段階で、いくつかの疾患に診断を絞り込むことは可能で、比較的軽症な外来患者(Outpatient)では、検査は必要最低限に留めることはできる。

しかし、入院患者(Inpatient)では、合併症を見逃す危険もあるため、検尿(Urine Analysis)、便潜血反応(Stool Occult Blood)、生化学検査(肝機能、血糖、総蛋白、アルブミン、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Creatinine)、電解質(Na, K, Cl) など)、心電図(ECG: Electrocardiography)、胸部X線などは標準検査(Routine Examinations)として全例で行う。

以下、呼吸器疾患の所見と症状(Signs and Symptoms)、訴え(Complaints)、などについて説明する。

Ⅰ.呼吸器疾患の主な症状(Major Symptoms)

せき(Cough)、たん(Sputum)

せき(咳嗽)は、たんの有無により湿性せき(Wet Cough)と乾性せき(Dry Cough)に分ける。乾性せき発作を主訴(Chief Complaint)とする典型的疾患は気管支喘息(Bronchial Asthma)である。

気管支炎(Bronchitis)、気管支拡張症(Bronchiectasis)、肺炎(Pneumonia)など、感染(Infection)を伴う疾患では、黄緑色の膿性たん(Purulent Sputum)を、肺結核、肺がんなどでは血性たん(Bloody Sputum)を訴えることが多い。

しかし、たんに血がわずかに混じるのはよくあることで、頻度としては、感冒などによる気管支炎や上気道炎(URI: Upper Respiratory Tract Infection)が圧倒的に多い。

呼吸困難、息切れ(Dyspnea, SOB: Shortness of Breath)

前回述べたように、呼吸困難は「呼吸を意識する状態」で、日常診療でもっとも多い訴えのひとつである。

呼吸困難は痛みと同様、自覚症状(Subjective Symptoms)であるため、その評価(Evaluation)には、理学所見(Physical Examinations)や検査結果などの客観的診断根拠が必要となる(例:ヒステリーなどによる呼吸困難と肺水腫や気管支喘息などによる呼吸困難の鑑別)。

胸痛(Chest Pain)

胸痛を主訴とする疾患は、

1) 皮膚疾患 例:帯状疱疹(Herpes Zoster)、
2) 胸壁疾患例:肋骨骨折(Rib Fracture、外傷(Chest-wall Injury)、
3) 縦隔(Mediastinum)の疾患 例:食道炎、解離性大動脈瘤(Dissecting Aneurysm)、食道がん(Esophageal Cancer)、
4) 心疾患 例:狭心症(Angina Pectoris)、心筋梗塞(Myocardial Infarction)、
5) 胸膜疾患 例:胸膜炎(Pleuritis) 、
6) 肺疾患 例:自然気胸(Spontaneous Pneumothorax)、肺塞栓(Pulmonary Embolism)  などがある。


痛みの訴えで、確認すべきことは、

  1. 部位とその範囲:
    例 1本指で指せるような限られた範囲の胸痛⇒心筋梗塞や狭心症の可能性は低い(=鑑別診断から除外可能)
  2. いつから?:
    突然(Sudden Onset)?徐々に進行?
  3. 痛みの性状:
    鈍痛(Dull Pain)?鋭い痛み(Sharp Pain)?拍動性(Pulsatile Pain)?
  4. 圧痛(Tenderness)の有無:
    局所的圧痛(local tenderness)は外傷(injury)によることが多いが、骨転移(bone metastasis)によることもある
  5. 痛みの放散(Radiating  Pain):
    例 横隔膜直上の病変による疼痛は肩へ放散

Ⅱ.呼吸器疾患の主な所見(Major Signs)

視診(Inspection)

  • 全身状態の把握: 意識レベル(Level of Consciousness)はとくに重要
  • 起坐呼吸(Orthopnea)の有無
    • 呼吸困難が高度の場合、患者さんは仰臥位(仰向けにねること Supine Position)では苦しくて起き上がる(Sitting Position)ことが多い。
  • 麻痺(Paralysis)の有無(四肢は動かせる?立ち上がれる?)
  • 話し方は正常?例:ろれつがまわらない⇒脳卒中?泥酔(アルコールの臭い?)
  • チアノーゼ(Cyanosis)の有無(口唇。爪が紫色となる⇒高度の低酸素血症がある)
  • 頸部の観察
    • 喘息発作や気道内異物誤嚥による呼吸困難の患者さんでは、胸骨直上のくぼみ(胸骨上窩 Supra-Sternal Fossa)が吸気時に引っ込む(陥凹 Retraction)。
    • 頸静脈怒張(Distention of Jugular Vein)や拍動の有無:心不全では静脈圧が上昇し座位でも頸静脈の怒張をみとめる(正常者では座位で頸静脈はみえない)。
    • 甲状腺腫(Struma)の有無

触診(Palpation)

  • 皮膚の状態(冷たい?乾いている?熱い?):
    ショック状態⇒皮膚は冷たくなる
  • 浮腫(Edema)の有無:
    脛部を圧迫(むくみがある時は、指先で押すとてひっこんだまま、元にもどらない=Pitting Edema)
  • 脈拍の触知:
    末梢動脈や頸動脈の拍動がよく触知できるか?映画では頸動脈を触れて生きているか死んでいるかを確かめるシーンをよく見る。


    脈拍が微弱な場合は、血圧低下(ショック状態)を意味し、蘇生(Resuscitation)などの緊急処置を必要とする。

バイタルサイン(Vital  Signs)の測定

脈拍(Pulse Rate)、血圧(Blood Pressure)、呼吸数(Respiratory Rate)、体温(Body Temperature)をまとめてバイタルサインという。初診時に看護師はバイタルサインを測定、カルテ(Chart)に記載する。測定時間記載と測定者のサインも必要である。

呼吸困難がある症例では、ほぼ例外なく、頻脈(Tachycardia ):脈拍数 90/min以上、頻呼吸(Tachypnea)呼吸数 20/min以上、となる。

打診(Auscultatory Percussion)

打診は18世紀、オーストリアの医師Auenbruggerが開発、その後にナポレオンの侍医として有名だったフランスのCorvisartが世界に広めた。父親が旅館の持主だったのでAuenbruggerは子供の頃から、ぶどう酒の残量を知るために使用人が酒樽を叩くのを見ていたことが、打診法発想のヒントになったとされている。


正常肺には空気が充満しているため、打診音は清音(Resonant )であるが、胸水貯留(胸腔(Pleural Cavity)に胸水や血液が溜まった状態)があると、打診音は鈍音(dull,またはflat)となる。

胸部X線がなかった20世紀初頭まで、打診は肺結核(Pulmonary Tuberculosis)による空洞(Cavity)や胸水貯留( Pleural Fluid)を診断できる唯一の方法だった。

聴診(Auscultation)

聴診は18世紀、フランスの医師Laennecが開発、全世界に広まった。胸部X線や臨床検査法が格段に進歩した現在でも、聴診は気管支喘息(Bronchial Asthma)や特発性間質性肺炎(IIP: Idiopathic Interstitial Pneumonitis)の診断にもっともよく利用されている。

以上、医師が初診の患者さんと対面し、診察から鑑別診断、治療方針の決定に至るまでの概略を述べた。

内容的には医療従事者でなければわかりにくい点もあるかと思うが、頸部の視診、とくに吸気時の胸骨上窩の陥凹の有無、は喘息発作の診断と重症度判定に有用であり、喘息の子供を持つ親に役立つ所見である。

次回は、結核について説明する。

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毛利昌史

毛利昌史

東和病院名誉院長。東京大学医学部医学科卒業。米国ミネソタ大学留学(フルブライト留学生)ミネアポリス市Mount Sinai Hospital勤務。帰国後、東京大学第二内科助手、東京大学医学部附属病院中央検査部講師、三井記念病院呼吸器センター内科部長などを歴任し、平成15年に国立病院機構 東京病院名誉院長に就任。その後化学療法研究所付属病院院長、東和病院院長を経て現在は東和病院名誉院長。

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