
常に「最も」とは限らない、英日翻訳での最上級の訳し方
英語には比較級と最上級があるということを、学校で習いましたよね。比較級は Light is faster than sound.(光は音より速い)のように、2つのものを比較する時に使います。一方で最上級は Tokyo is the largest city in Japan.(東京は日本で一番大きな都市です)のように、3つ以上のものを比較して「一番」を強調する表現です。
ところが、実務で翻訳をしていると、「本当に“一番”なのか?」と疑いたくなる最上級表現に、よく出くわします。とりあえず「最も」と訳してはみたものの、なんだか日本語として不自然……。
そんなときは、別の意味で使われているのかもしれません。本ブログでは、「一番」や「最も」とは限らない、最上級の訳し方について解説します。
「最も」がしっくりこない…
まずは、以下の例文と簡単な訳文を見てください。
This system can operate reliably even in the most complicated environment. This solution will help you overcome the most challenging task. |
いずれもIT系の案件でよく見るテキストですが、「最も複雑なIT環境」や「最も困難な課題」という表現、ちょっと引っかかりませんか?何をもって「最も」と断定しているのでしょう?そのIT環境や課題が最も複雑/困難と、どうして言い切れるのでしょう?
やはり、
Mount Everest is the highest mountain in the world.
エベレストは世界で一番高い山です。
のように、数字か何らかの事実で「一番」であることが裏付けられるものでないと、なんだかしっくりきませんよね。
最上級が持つ別の意味
実は、最上級は、「一番」や「最も」という意味ではなく、「とても」や「非常に」といった強調や誇張表現の意味で使われるケースも少なくありません。そのような場合に「最も」と訳してしまうと、文章の自然さやニュアンスを損ねることがあります。そんなわけで、上に挙げた2つの例文は、こんな風に訳すことができます。
This system can operate reliably even in the most complicated environment. This solution will help you overcome the most challenging task. |
その他の例文
このほかにも、強調や誇張の意味で使用されている最上級の例文をいくつか挙げてみます。
That movie had the most ridiculous storyline.
Sipping wine on the terrace at sunset was the most relaxing moment. |
このように工夫することで、原文が持つ強調のニュアンスを自然なかたちで訳出することができます。
まとめ
今回は、「一番」や「最も」ではなく、強調や誇張表現になる場合の最上級をご紹介しました。最上級が出てきたときは、まず「本当に比較して一番なのか?」と考えてみてください。それがはっきりしない場合は、「とても」や「非常に」の意味で訳出すると自然な日本語に仕上がると思います。
川村インターナショナルの翻訳サービス
川村インターナショナルでは、AIや機械翻訳の活用、プロセスの自動化やデジタル化による翻訳業務効率化ソリューションをご提案します。翻訳支援ツールの導入を検討している、自社の翻訳資産を活用して機械翻訳エンジンをカスタマイズしたい、など翻訳業務の効率化をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
関連記事