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ポストエディットとは?人手翻訳との違いと翻訳効率アップの仕組み

ポストエディットとは?人手翻訳との違いと翻訳効率アップの仕組み

「ポストエディット」という言葉、ご存じないという方もいるかもしれませんが、翻訳業界ではメジャーな手法の1つとなってきました。川村インターナショナルで実際にポストエディット業務に携わっている筆者が、ポストエディットとは何か、人手翻訳との違い・ポストエディットの種類などについてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.略語説明
  2. 2.ポストエディットとは?
    1. 2.1.ポストエディットの種類:フルポストエディットとライトポストエディット
    2. 2.2.ポストエディットと従来の翻訳の違い
    3. 2.3.機械翻訳の発展
    4. 2.4.ひと対機械
  3. 3.今後のポストエディット
  4. 4.川村インターナショナルの翻訳サービス

略語説明

翻訳業界では、機械翻訳に関連した略語が多く使用されています。ここでいくつかご紹介します。 

  • MT:「Machine Translation」いわゆる機械翻訳。
  • NMT:「Neural Machine Translation」ニューラルネットワーク(AI)を活用したニューラル機械翻訳。Google翻訳はNMTを使用しています。
  • SMT:「Statistical Machine Translation」統計的機械翻訳。
  • HT:「Human Translation」翻訳者が行う人手のみの従来の翻訳。日本語では、「機械翻訳」に対して「人手翻訳」などと呼ばれます。
  • PE:「Post-edit」ポストエディット。機械翻訳を後編集して訳文を完成させることです 。



ポストエディットとは?

ポストエディットの種類:フルポストエディットとライトポストエディット

ポストエディットとは、前述のとおり、機械翻訳を後編集して訳文を完成させることです。ポストエディットは要求される品質によって、一般的にフル(full)PE(ISO 18587)とライト(light)PEの二種類に分けられます。

分かりやすく言うと、フルPEは機械翻訳(MT)の訳をできるだけ活かすこと以外、人手のみの翻訳(HT)と品質要求などがほとんど変わりません。

ライトPEは、フルPEや人手のみの翻訳ほど高い品質が求められておらず、「伝われば良い」内容のものです。仕様によりますが、機械翻訳結果にほとんど手を加えない場合もあります。


まとめると、以下のようになります。

フルPE(ISO 18587):MTの出力結果を活かしてHTよりも生産性を上げながら、HTと同等の高い品質要求を満たすことができます。

ライトPE:品質要求がHTと全く異なり、基本的には「伝わればいい」程度の編集にとどまるため、機械翻訳結果を修正せずにそのまま使う場合もあります。

KI のポストエディットサービスでは、フルPE/ライトPEと分類をせず、お客様のご要望にあわせた最適なプランをご提案しております。

ポストエディットと従来の翻訳の違い

ポストエディットと従来の翻訳者による人手のみの翻訳の最も大きな違いはプロセスです。人手のみの翻訳は翻訳者が原文を翻訳し、翻訳者とは別の校閲者が原文と訳文を突き合わせてチェックします(仕様によってはチェックを行わない場合もあります)。それに対しポストエディットは、原文を機械翻訳にかけてから人が修正を行います。

フルPEの説明でお気づきかと思いますが、ポストエディットには翻訳者が一から翻訳する場合と同等の翻訳スキルが求められます。原文と訳文を比べて修正する必要があるためです。

機械翻訳を使用しているためポストエディットは人手のみの翻訳より数倍速いと思われがちですが、上記の通り求める品質によってかかる時間が変わります。例えば、品質よりもコストダウンかつスピードアップを重視するのであれば、間違っている表現や情報の欠落の修正のみに対応できるライトPEが適しています。

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機械翻訳の発展

ポストエディットの前工程である機械翻訳には、統計的機械翻訳(SMT)ニューラル機械翻訳(NMT)などの種類があります。

SMTは大量の対訳データから統計的な手法で訳文を生成するものです。従来の機械翻訳の手法の一つで、「なぜこの文章を入れればこのような訳が出てくるのか?」と不思議に思うような訳文が出力されることもありました。

それに対して近年主流となっているNMTは、AIを活用した機械翻訳であり、正しい文章を学習して翻訳の精度を上げていきます。時には機械翻訳と思えない高品質な訳文が出てきます。


このような機械翻訳の発展がなければ、ポストエディットの需要も現在のように増えていないといっても過言ではないでしょう。SMTのような従来の機械翻訳に対するポストエディットは、人手のみの翻訳と工数がほとんど変わらなかったのですが、常時進化するNMTによってそれが大きく改善しつつあります。

ひと対機械

いつまでもAIに学ばせることができないものは何でしょうか。それは感情や文化といった人間らしさです。

人手のみの翻訳と機械翻訳、ポストエディットの違いを考えるとき、この点もまた一つのポイントです。AIには正しい文章を吸収することはできても、感情、文化や文脈は吸収できません。そのため、ポストエディット前の機械翻訳結果には、どうしても直訳になってしまう部分が出てきます。

それに対して人手のみの翻訳では、ヒューマンエラーと言って、原文にない内容まで書いてしまったり、その逆に原文にある内容を書かなかったり、数字を間違えたりと、不注意によるミスが生じます。

原文をプリエディット(前編集)して機械翻訳をかけやすくすることも可能ですが、やはり原文の内容によって向き不向きはあります。機械翻訳と人手のみの翻訳のどちらかをなくすことはできないので、互いが互いを補い合える状態が理想なのではないでしょうか。

今後のポストエディット

かつて修正の手間が多かった機械翻訳は今、場合によって訳文を編集せずとも活用できるようになりました。この機械翻訳の進化とともに、ポストエディットも進化しています。

人が一から翻訳を行う人手のみの翻訳と違い、ポストエディットは機械翻訳の訳出結果を修正する作業です。機械翻訳とあわせてポストエディットを活用することで、コストダウンと翻訳の効率向上、スピードアップにつながります。例えば、以下のような使い分けができます。

  • 社内資料のようにスピーディーな情報共有を目的とした文書であれば、機械翻訳の出力結果のままとするか、もしくはライトPEを行う
  • 重要な資料や一般公開向けの文書であれば、フルPEを行う
  • 一般公開向けだが定型的な表現が多いユーザーガイドなどには、機械翻訳の出力結果を見てライトPEとフルPEのどちらにするか判断する

AIやクラウド技術などIT関連のキーワードが騒がれる今日、機械翻訳のさらなる発展が期待され、ポストエディットの需要もますます増えるでしょう。


ポストエディットは翻訳者の皆様には敬遠されがちな作業であるようです。不自然な文章を目にして自分の文章までおかしくなる、一般的な翻訳作業に比べて単価が低い、翻訳スキルが活かされない、などのご意見があると伺っています。

ポストエディットには確かに一から翻訳する場合とは異なるスキル(機械翻訳の出力結果を最大限に使用して修正する、機械翻訳の間違いやすい点を把握して効率的に確認する、など)も必要となりますが、求められる翻訳技術のレベルに変わりはないため、翻訳のご経験の中で培われた知識や技術は必ず活かしていただけます。

また、機械翻訳とコーパスの改善によって出力される訳文の精度が上がり、修正作業の負荷も減ってきます。人が行う翻訳の需要が消えることはありませんが、同時に、ポストエディットの需要は必ず増えてくるので、翻訳業務の幅を広げていく一つの手として、ポストエディットを前向きにとらえていただきたいと考えています。


「機械翻訳」と「ポストエディット」、お客様にとっても翻訳者の皆様にとっても気になるキーワードだと思います。その興味を深めるきっかけになれば幸いです。


川村インターナショナルの翻訳サービス

機械翻訳を最大限に活かして翻訳を行う「ポストエディット(PE)」による翻訳サービスの需要が高まっています。品質/納期/コストなどの要素のうち、どれを優先するべきかによって、一から人間が翻訳する人手のみの翻訳と、機械翻訳+ポストエディットを使い分けることが、今後より重要になってきます。

川村インターナショナルでは、お客様の抱える課題やニーズに応じて、経験豊富なスタッフが最適なソリューションを提案いたします。大量なマニュアルの翻訳、コスト・納期が最優先。そのような翻訳やローカライズに関する悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。


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