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マーケティングのための吹替翻訳

スマートフォンやタブレットの普及、そしてYouTubeをはじめとした動画視聴チャンネルの多様化に伴い、マーケティングの手段としての動画コンテンツがこれまでになく注目されています。

特に、グローバル展開を視野に入れる多くの企業では、インバウンド市場・国外市場へのアプローチ手段として、動画による広告や商品紹介を積極的に導入しています。

このような国外向けの動画作成において重要となるのが、「吹き替え」や「ボイスオーバー」といった手法です。

従来では「吹き替え」や「ボイスオーバー」は、テレビや映画などのエンターテイメントを中心とした分野での使用が主流で、産業翻訳の市場規模はそれほど大きくありませんでした。

しかし、産業翻訳の分野でも、これらの手法は字幕翻訳とともに使用例が増えてきています。


以前の記事ではマーケティング動画の字幕翻訳について紹介しましたので、今回は吹き替えとボイスオーバーの概要と、その重要さについて説明します。

目次[非表示]

  1. 1.吹き替えとボイスオーバーの違い
  2. 2.吹き替え/ボイスオーバーが有効な例
  3. 3.従来の映像翻訳の映像と、産業分野の映像の違い
  4. 4.吹き替えとボイスオーバーの収録方法
  5. 5.おわりに

吹き替えとボイスオーバーの違い

さて、「吹き替え」と「ボイスオーバー」の具体的な内容と違いは何でしょうか?

以下に内容と例をまとめてみました。


■吹き替え
映画やアニメなどで標準的に使用されている、原語音声を完全に消して吹き替えた日本語音声をのせる手法


■ボイスオーバー

ニュースやドキュメンタリーなどでよく見られる、元の音声をわずかに残しながら日本語を上に重ねる手法

産業翻訳では、動画のタイプによって吹き替えとボイスオーバーを使い分けることがあります。同時に、どちらを使っても有効な場合もあるので、その場合はクライアントの意向によって使用する手法を決定します。

吹き替えが好まれる動画は、完全に日本向けにローカライズしたいような案件です。分かりやすい例では、外国企業のCEOの音声をあえて大阪弁で吹き替え、大阪弁を喋らせることで視聴者に親近感を持ってもらえるよう、わざとキャラ付けをするというような手法があります。 

ボイスオーバーは、逆に元の原語をあえて残すことで、オリジナルの雰囲気が分かるようにしたいときに有効です。こちらは、もともと舶来品好きだった日本人の感性にあった手法ではないでしょうか。

吹き替え/ボイスオーバーが有効な例

それでは、ドキュメントを使用するより動画の方が有効な例、特に字幕よりも吹き替え/ボイスオーバーが有効な例をご紹介します。

例えば、取り扱い説明文章で読むより映像のほうが断然分かりやすいという特徴があります。テキストの取扱説明書でも、文章だけでは分かりにくいため、図を挿入することは必須条件です。とはいえ、立体的なものの説明は図でもなかなか理解できないものです。

今やYoutubeを見れば、日常のちょっとしたことのティップスとして、手順説明の映像がたくさん投稿されています。つまり、取り扱い説明や手順説明においては、説明動画がそれだけ視聴者に求められているといえるのではないでしょうか。

このように、企業の製品やサービスの説明にも映像がよく使われるようになりました。

特に、説明的な動画を視聴する際は、動画に映る実際の動作や方法にも注目する必要があるため、字幕により目で追うべき情報を増やすのではなく、耳から情報を取り入れることのでき、さらに字数制限のある字幕と違ってよりたくさんの情報を伝えることのできる吹き替えやボイスオーバーが有効でしょう。

個人的な例で恐縮ですが、先日ポップアップテントというものを購入しました。閉じた時の形状は薄い丸型のシートなのですが、これを広げるとあら不思議、ドラゴンボールのホイポイカプセル*のように、ポン!と大きくなってテントになってしまうのです。秘密は形状記憶のワイヤーがリリースされることによる作用のようですが、これを発明した人はすごいですね。必要は発明の母ですね。

ところが、元はとても単純な仕組みにもかかわらず、原理を理解していないと、このテントを収納するのが一苦労なのです。あなたはこの図を見て一目で理解できるでしょうか?理解できたあなたはきっと理系ですね。個人的にポップアップテントマスターの称号を授けたいと思います。

まぐれでできることもあるでしょう。でもそれではダメなのです!きちんと理解してやらないと、次の時に畳めなくて苦労するのです。

でももう大丈夫。映像を見ながら試してみれば、誰でも簡単に畳むことができます。気になるあなたは、今すぐ「ポップアップテント たたみ方 動画」で検索してみてください。後回しにするのはやめて、今すぐ。


*ホイポイカプセル - 物を粒子状に変換し、数センチ程度のカプセル内に収容できる道具。カプセルにはボタンが一つ付いており、これを押してカプセルを投げると、数秒後に収容されていたものが実体化する。(ウィキペディアより)


従来の映像翻訳の映像と、産業分野の映像の違い

先ほど、従来の映像翻訳はエンターテイメント分野に多かったと述べましたが、それでは産業翻訳での映像翻訳は、従来の映像翻訳と比べるとどのような違いがあるのでしょうか?

産業翻訳での吹き替えやボイスオーバーの大きな特徴は、そのほとんどがナレーション形式になっている、ということです。登場人物が出てくる動画の字幕翻訳や吹き替え翻訳を行う例はあまり見かけられません。これは、使用される映像が、取り扱い説明プロモーションビデオなどに用途が限定されているからです。

このような違いがあると、従来の映像翻訳で重要視されていても、産業翻訳では全く問題とならない点もでてきます。その一例を紹介します。


・リップシンク - 口の動きに合わせて訳語を決める方法

ドラマなどでは登場人物の口の動きに合わせて訳語を決めるリップシンクという手法があります。呼吸や間をおいてしゃべるタイミングや口の形にまでこだわって訳語を決めることができると、吹き替えられた音声はその役者があたかも本当に日本語をしゃべっているかのように聞こえます。ナレーションでは、話す人物が実際に動画に登場することはまれなので、この工程が不要になります。気をつけるのは長さだけでいいので、その分自由度があがるといえます。


吹き替えとボイスオーバーの収録方法

それでは、吹き替えやボイスオーバーを依頼する際、音声の収録はどうなるのでしょうか?

収録方法には、しっかりと作りこめるスタジオ収録と、費用とスケジュールの調整が手軽なナレーターによる自宅収録があります。

希望の納期や予算に応じて、条件に見合ったものをぜひ検討してみてください。

スタジオ収録

専用のスタジオを借りて音声を収録します。スタジオ収録はスタジオ使用代、音源をコントロールするミキサー、進行役のディレクターが必要になるため、当然その分の費用がかかります。前提としてクライアントの立会いも求められます。これは、収録しながら声のトーンや読み方などをその場で確認してもらい、その場で修正するためです。費用はかかりますが、その分高品質な製品が仕上がります。

自宅収録

サンプルを参考にあらかじめ決定されたナレーターが自宅で収録するため、費用を抑えることができます。収録環境はナレーター自身が構築するため、環境のばらつきはありますが、基本的には防音材を使用して収録部屋を用意したり、密閉度の高い部屋にカーテンで囲って反響を抑えたりと、いろいろと各自が工夫して収録を行っています。

この場合は、基本的に読み間違いでもない限りはとり直しができないため、事前に漢字やアルファベットの読み方を確認して、読み上げの速さやトーンなどを確定しておく必要があります

以前当社では、ローカルのラジオ局に収録をお願いしていたことがありました。

そのラジオ局はナレーターや声優としても活躍しているパーソナリティの方も多く在籍しており、録音設備も当然プロ仕様になっています。ただし、収録スタジオのように完全防音ではないため、外で大きな音がすると聞こえてしまうことがありました。そこは、立地が幹線道路沿いということで、車の往来が多い場所でした。基本的に外部の音が入り込むことはないのですが、一度だけナレーションの後ろで、トラックのブロロロロロ、という重低音がかすかながらもしっかりと主張していて、再収録をお願いしたことがありました。分かる人にしか分からない程度の音でしたが、かつて環八沿いのボロアパートの住人だった筆者の耳には、懐かしい音としてしっかりと認識されたのでした。


おわりに

いかがでしたでしょうか。マーケティングコンテンツにおける吹き替えやボイスオーバーが有効な理由がお分かりいただければ嬉しいです。

五感のうち視覚と聴覚に訴える映像の吹き替えおよびボイスオーバーは、翻訳コンテンツの中でももっとも情報を多く伝えることのできるコンテンツです。産業翻訳の世界でも、字幕とともにますます目にする機会が増えることでしょう。



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川村インターナショナルWebマーケティングチームです。開催予定セミナーやイベントの告知、ブログ運営などを担当しています。

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