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「なぜか読みにくい」訳文の正体④アレがコレでソレだから

翻訳された日本語が、どこか読みにくいと感じたことはないでしょうか。意味が間違っているわけではないし、訳し漏れもないし、専門用語も正しく使われている。なのに読みにくい!表現が不自然!こなれていない!

このような訳文は、なぜ生まれてしまうのでしょうか。どうすれば自然な日本語になるのでしょうか。本連載では、「なぜか読みにくい」訳文の正体を突き止めるとともに、不自然さを解消する手段を考えていきます。
(前回までの記事:①遠距離でのすれ違い②命なきモノ③要なき主

目次[非表示]

  1. 1.人や物の名前がすぐに出てこない
  2. 2.ああでもない、こうでもない
  3. 3.何が来る?
  4. 4.川村インターナショナルの翻訳サービス

人や物の名前がすぐに出てこない

「え?あの件はほら、あの人が担当するからさ、それより問題はこれなんだよねー」

人や物の名前がすぐに出てこない。会話に「あれ」「それ」などの言葉が増える。皆さんも身に覚えがないでしょうか?脳が疲れてくると起きる症状だそうで、最近は30代の人でも注意が必要と言われています。
脳の疲労のために訳文をうまく組み立てられず、不自然な表現になってしまう――そういうこともあるかもしれませんが、今回のテーマはちょっと違います。


ああでもない、こうでもない

では早速例文を見ていきましょう。Apple社のスマートフォン「iPhone」のレビュー記事です。

iPhone 7を正面から見たら、iPhone 6や6sと区別するのはほぼ不可能だ。

これらのiPhoneのデザインはそれほど似ている。

私も使っていた機種ですが、確かによく似ていました。

さて、この文の不自然な点は、もうお分かりかと思います。「これら」「それほど」という言葉が同居している点ですね。代名詞が多いと不自然な印象の文になってしまいます

英語はthisやthatなどの代名詞を多く使う言語ですが、全部に「これ」や「あれ」という訳を当てていくと、こなれた日本語になりません。いわゆる「直訳調」を感じさせる要因の1つと言えます。日常会話で、名前が出てこなくて「あれ」とか「それ」と言ってしまうのは、具体的に何を指しているのか分かりにくいという問題ですが、上の例文はくどい感じがするのが問題です。

できれば、代名詞は1つの文で2回以上使いたくありません。省略できそうなものがないか探してみましょう。2文目の最初にあった「これらの~」はなくても伝わりそうです。

iPhone 7を正面から見たら、iPhone 6やiPhone 6sとほとんど見分けがつかない。
それほどデザインが似ているということだ。

これで少しすっきりしたでしょうか?元の文の読みにくさは、「しつこい・くどい」感じから来ていて、それをさらに突き詰めていくと、「代名詞の多用」という正体に行き着きました。前回の記事のテーマと同様に、省けるものは省き、できるだけ簡潔な表現を意識することが、読みやすい訳文を作る上で重要だと思います(もちろん、必要なものまで消さないように注意が必要ですが)。 

ちなみに、1文目の「不可能だ」を「見分けがつかない」に変えたのは、2文目を「~ということだ」にしたからです。「~だ。~だ。」のように、同じ文末が続くのも、冗長な感じがします

今回の例文では代名詞を省略するという形を取りましたが、代名詞が指すものを具体的に書くとうまくいくケースもあると思います。

何が来る?

本連載の第1回の記事で、「使うだけで『翻訳調』になってしまう言葉」を1つご紹介しました。このような言葉は他にもたくさんあります。れっきとした日本語なのに、使う文脈によっては、いかにも「翻訳しました」という印象を与えてしまう言葉です。

言葉の使いどころが良くない例をもう1つ見てみましょう。

「ソフトウェアバリデーション」という用語は不安、混乱など多くの反応をもたらす可能性があります。

文法的に間違っているという印象は受けないかもしれませんが、意味がすんなりと頭に入ってきません。この違和感を生み出しているのは、「もたらす」だと思います。

辞書で「もたらす」を調べてみると、「持ってくる。持っていく」や、「ある状態を実現させる」といった意味がありました(出典:デジタル大辞泉)。

この例文で、何を「持ってくる」あるいは「実現させる」のかと言うと、「反応」ですね。反応を持ってくる。うーん、どういうことなのでしょう。個人的には、この「どういうことだろう?」と考える作業が、翻訳でとても大事だと感じています

用語が反応を持ってくる。用語に反応を示すということ?→どのような反応?→不安、混乱→というふうに考えていき――


「ソフトウェアバリデーション」という言葉への反応は人によってさまざまで、不安を覚える人もいれば混乱する人もいます。

このような訳にしてみました。

英語の「bring」などの動詞は、「もたらす」と訳されることがよくあります。意味の範囲が広い言葉なので、そう訳しておけば「間違い」にはならないかもしれません。でも、実際の文脈では、意味範囲の広さ=曖昧さが災いして、英文が意図するところを正確に表現できない場合もあります

bringという単語を見かけたら、機械的に「もたらす」と訳すのではなく、「この文脈でもたらすとは、つまり・・・」と考えるようにしています。「これってどういう意味なんだろう?」という疑問は、読み手の人には抱かせたくないものですね。​​​​​​​


川村インターナショナルの翻訳サービス

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KIマーケティングチーム

KIマーケティングチーム

川村インターナショナルWebマーケティングチームです。開催予定セミナーやイベントの告知、ブログ運営などを担当しています。

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第一章   はじめに
第二章   機械翻訳(MT)活用のニーズ
第三章   機械翻訳(MT)と(HT)の違い
第四章   機械翻訳と関連技術
第五章   MT導入時に知っておくべき6つのポイント
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