例えば、アルファベットの「A」は赤色、「G」はオレンジ、「O」は白、「P」は紫。
さらには、「翻訳」は茶色、数字の「3」は青。
ドレミの「レ」の音を聞いたときに色は見えるでしょうか?
「ド」は赤、「ミ」は黄色、「ファ」は緑。
Tuesdayは水色、Saturdayはピンク、Fridayは青色。
2051年5月31日が何曜日かを即座に答えることはできますか?
一つでも心当たりがあれば、あなたは「共感覚」を持っているかもしれません。
さて、共感覚とはなんなのでしょうか?
共感覚とは、一つの感覚の刺激によって、それとはまた別の知覚を感じることのできる現象のことを言います。
この現象は、多くの種類が発見されています。例えば、文字や数字に色を感じる色字、音を聞いて色を感じる色聴や、他にも痛みから色を感じたり、数列が空間配置されて感じたりする人もいるそうで、その種類は100種類を超えると言われています。
共感覚の持ち主は非常に少なく、10万人に一人ほどしかいないと言われていましたが、最近では技術や研究が進み、約20人に一人はいるのではないかとも言われています。共感覚を持つ人は幼少期の時点で共感覚の存在には気付いていることが多いのですが、他の人も同じように感じていると思うため、特に公表をしないそうです。
宮沢賢治や爆笑問題の田中裕二さんなども共感覚の持ち主だそうです。(参考:Wikipedia『共感覚』)
この現象のメカニズムはいまだ解明されていない部分が多く、共感覚の持ち主にしかわからない現象であるため、メカニズムの解明は難しいと言われています。
では、共感覚を持っている人は持っていない人よりも言語習得に向いているのでしょうか?
文字に色が見えるということは、言語を覚える際に役に立ちそうな気がしますよね。
共感覚は多種多様なので、あくまで傾向ではあるそうですが、単語の色のイメージは最初の文字の色で決まる傾向があるようです。例えば、先ほど例にあげたSaturdayという単語はSがピンクなので、Saturdayという単語自体にピンク色のイメージがつきます。Sがピンクに見えるとなると、SaturdayとSundayは同じ色に見えてしまうので、普通に単語を暗記するよりも紛らわしくなってしまうかもしれません。
さらには色を表す単語が違う色に見えている場合には、Greenという単語がオレンジにみえたりPinkという単語が紫に見えたりすると逆に混乱してしまいそうですね。
それとは逆に、音は同じで綴りが異なる単語の場合はスペリングを覚えるのに共感覚が使えるかもしれません。例えば、eが水色でaが赤色に見えているとします。healとheelを使い分けたい場合に、赤色のaが含まれているhealは「癒す、治す」、水色のeしか含まれていないheelは「かかと」というふうに、色と意味を結びつけることができます。
さらには、漢字に色を感じる人は、部首に色が見える人が多いそうです。この場合は、部首でその漢字の色のイメージができるので、先ほどの英単語の使い分けと同じく、漢字を思い出す際には便利かもしれないです。例えば、冷蔵庫の「冷」が「怜」なのか「玲」なのかわからなくなったときにはニ水に黄色のイメージがついていれば、ニ水の「冷」がすぐに出てくるかもしれません。
では、実際に共感覚は何かに役立つのでしょうか?
数学者のダニエル・タメットは共感覚の持ち主なのですが、自身の著書『ぼくには数字が風景に見える』の最初には、こう書かれています。
誕生日に含まれている数字を思い浮かべると、浜辺の小石そっくりの滑らかで丸い形があらわれる。滑らかで丸いのは、その数字が素数だから。31,19,197,97,79,1979はすべて、1とその数字でしか割ることができない。9973までの素数はひとつ残らず、丸い小石のような感触があるので、素数だとすぐにわかる。ぼくの頭のなかではそうなっている。 |
さらには、
11は人なつこく、5は騒々しい、4は内気で静かだ。 |
彼の頭の中では数字と色と形が感覚と繋がり、さらには動きや特徴までをイメージすることができます。彼は、著書の中で外国語を10ヶ国語も話せることを明かしています。それだけの言語を自在に操れるだけでなく、円周率の小数点以下を2万桁以上暗記するほどの記憶力を持っているそうです。
共感覚は個人によって感覚が異なるため、全員にとって共感覚が直接言語習得につながっているかどうかはわかりませんが、持ち主本人たちにとっては当たり前の「感覚」でしかないのです。
結果として、成功を手に入れた人は多いですが、それぞれが物心ついた時から見える色や感覚の魅力に好奇心をくすぐられたのでしょう。