習得に30年!? 「ひどい」?ドイツ語

新しい言語を習得しようとすると、大変な根気と時間が必要です。特に文法や文字が日本語や英語とは異なる言語を習得するには、文字から覚える必要があり、かなりの労力を要します。

しかし、英語ですでに馴染みのあるアルファベットを使う言語でも、「習得に30年かかる」とすら言われている言語があるのをご存知ですか?

本コンテンツではこれまでに「アラビア語」「ポルトガル語」「ポーランド語」の紹介をしてきましたが、今回は「ドイツ語」についてご紹介します。

ドイツ語って?

ドイツ語は、ドイツはもちろんのこと、オーストリアスイスなどで使用されている言語で、話者人口は約1億3000万人といわれています。しかし、これらの国だけでなく、意外なほど幅広い地域で使用されている言語でもあります。

たとえば、イタリアのボルツァーノという都市はイタリア語と並んでドイツ語が公用語になっています。また、ポルトガル語が公用語であるブラジルでも、ブルメナウという都市にはドイツ系移民が多く住み、ドイツ風の街並みで知られているだけでなく、毎年オクトーバーフェストが開かれています。ドイツ語が使用されている地域は思わぬところにまで広がっています。

 

英語と似ている?

ドイツ語は英語と同じくインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派に属しているため、共通点が多いと言われます。たしかに、綴りが英語と同じ、あるいは非常に似通っているため、ドイツ語を知らなくてもなんとなく意味の見当がつくような単語があります。

例:

(独) Wind: 風 -> (英) wind

(独) oft: しばしば -> (英) often

(独) studieren: 勉強する -> (英) study

習得に30年!?――ドイツ語の文法

しかし、当然ながら英語と異なる点も多数あります。『トム・ソーヤの冒険』で知られるアメリカの作家マーク・トウェインは、「ひどいドイツ語」(『ヨーロッパ放浪記』所収)というエッセイで、「才能ある人なら、英語を習得するには30時間(スペリングと発音を除く)、フランス語を習得するには30日ドイツ語を習得するには30年を要する」「このままならドイツ語は死語になるだろう。死者しか学ぶ時間が取れないのだから」と書いています。トール・テール(ほら話)の名手であったトウェインらしい文章でいささか大げさではありますが、文法についていえば英語よりも複雑な規則が存在することは確かです

太陽は「女性」で空は「男性」?――ドイツ語の名詞

ドイツ語の名詞には男性名詞女性名詞中性名詞3つの性があります。Vater(父親)が男性名詞で、Mutter(母親)が女性名詞であるなど、実際の性の区別と一致するケースもありますが、実際の性などない名詞についてもかならず性があります。たとえば、Himmel(空)は男性名詞で、Sonne(太陽)は女性名詞です。なお、ドイツ語の名詞は単語の頭を必ず大文字にします。

動詞はいつも2番目

原則として、動詞は文の構成要素のうち、2番目に置かれます。逆に言うと、動詞以外は置かれる位置が決まっていません。英語では文の構成要素としては主語を最初に置くのが原則ですが、ドイツ語では決まっていないため動詞の後に主語が置かれることもあります

やっかいな分離動詞

ドイツ語には分離動詞と呼ばれる動詞があります。接頭辞(「前つづり」と呼びます)のついた複合動詞のようなものなのですが、文中では文字どおり「分離」して接頭辞が文の末尾に来ます。たとえば、aufstehen(起きる)という動詞は下記のように使用されます。

Ich stehe jeden Tag um sechs auf.

私は毎日6時に起きる

stehenという動詞は単独では別の意味があり、末尾のaufをうっかり見落としてしまうと正しく意味を理解できなくなってしまうため、注意が必要です。

たぐいまれなる造語力

ドイツ語では複数の単語をつなげて新しい名詞を作ることができます。

例:

Freundschaftsbezeigungen (友情の表明

この単語は以下のように区切ることができます。

 

Freundschafts | bezeigungen

(友情)        (表明する < bezeigen)

残念ながら、このような造語は辞書には載っていないことが多いため、部分に分けてそれぞれ意味を確認しなければなりません。慣れていないと、どこで切ればいいのか悩むことも少なからずあります。

ちなみにドイツ語の出版物で登場した単語で最も長いと言われているのは、

Donaudampfschiffahrtselektrizitätenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft

(ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合)

で、ギネスブックにも掲載されているとのことです(参照)。

ややこしい格変化

上記のとおり、ドイツ語は語順のルールが英語と比べて緩やかだと言えます。語順からは意味が判断できない代わりに、意味は格変化によって決定されます。ドイツ語には主格 (「~が」)属格 (「~の」)与格 (「~に」)対格 (「~を」) という4つの格があり、格に応じて変化があります。

例:

1.      Der Vater liebt die Mutter. (父は母を愛している)

2.      Den Vater liebt die Mutter. (母は父を愛している)

上の2つの文は、一文字違うだけですが、”der”が主格で”den”が対格の定冠詞のため、1は「父」が主格であり、2では「父」は対格であると判断できます。このように語順ではなく格変化が意味の理解において重要な役割を担います。

代名詞が変化するのは英語もドイツ語も同じですが、ドイツ語ではこの例のように冠詞にも格変化があります。英語で言えば”the”や”a”が変化するようなものです。

また、上記のとおり名詞には男性名詞、女性名詞、中性名詞の3つの性があり、性ごとに格変化が異なります。さらに、形容詞がつくと形容詞自体も変化し、その変化もやはり性によって異なるため、格変化のパターンはさらに複雑なものになります。格が7種類あるポーランド語ほどではありませんが、変化のルールが多くおぼえるのが大変だと言えます。

まとめ

名詞の性複雑な格変化など、習得すべき文法規則が非常に多いドイツ語ですが、その分ルールを把握してしまえば読解も会話も上達が早いようです(もちろんそれまでが大変なのですが……)。日本ではいまや季節に関係なくオクトーバーフェストが開催されるようになっていますが、それと同じくらいドイツ語に親しみを持っていただければと思います。


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