オオサツエ?ササキエゴ?

-不思議なポーランド語-

 

企業のグローバル化が進むにつれ、多言語翻訳のニーズも高まりつつあります。そのニーズに応えるため、翻訳会社では英文和訳、和文英訳の組み合わせでだけでなく、多言語の翻訳にも対応しています。

当コンテンツではこれまでにもポルトガル語アラビア語の翻訳を紹介してきましたが、今回の記事では、ポーランド語について、そして翻訳の際に気を付けるべきポイントを紹介します。

ポーランドってどんな国?

ポーランド語が話されている国といえば、もちろんポーランドです。しかし、そもそもポーランドという国のイメージを具体的に持っている方は少ないのではないでしょうか。

いきなりですが、クイズです。以下の国旗でポーランド国旗はどれでしょう。

A.         B.         C.

 

正解は、Cです。日本と同じく白と赤で構成されています。

ではポーランドの場所はどうでしょうか。
以下の地図上のA~C、どれがポーランドでしょう。

正解はAです。 

ちなみに、Bはドイツ、Cはウクライナ、ウクライナの東に広大に広がるのがロシアです。このように、ポーランドは地理的に西ヨーロッパの国々ロシアの間に挟まれ、歴史上、常に他国からの侵攻を受けてきました。
実は、1793年から第一次世界大戦終了の1918年まで、ポーランドはロシア・ドイツ・オーストリアに分割され、約100年間地図上から消えていますしかし、ポーランド語は長い分割期間を経ても現在でも使用されており、ポーランド人が自分たちの言語に誇りを持ち、大切に受け継いできたことがわかります。

ポーランド語の特徴

話者数、主に話されている地域

ポーランド語は全世界で約5000万人、うちポーランド国内の話者は約3800万人と多くが国内で話されています。またポーランド語はスラブ言語に属し、発音や文法などはロシア語と似ています。単語も共通のものがあり、ロシア人とポーランド人がお互いの言語で話しても、なんとなく分かる…くらいには似ているそうです。

        

ポーランド語の文字

ロシア語に似ていると上述したポーランド語ですが、ロシア語と大きく異なる点があります。まずは、以下のロシア大使館のウェブサイトをご覧ください。


ロシア大使館HPより)

英語のアルファベットとは違う、不思議な文字が並んでいます。ロシア語はこの「キリル文字」と呼ばれる文字を使用しています。
では、今度は以下のポーランド大使館のウェブサイトをご覧ください。


ポーランド大使館HPより)

ご覧いただくとわかるように、ロシア語のようにキリル文字ではなく、ポーランド語はラテン文字を使用します。といっても、英語と全く同じアルファベットではなく、以下のように異なる形のものもあります。

これには宗教が大きく関係しています。
キリスト教がヨーロッパで広がった際、ポーランドでは、ロシアや多くの東欧地域で信仰されていた東方教会ではなく、西ヨーロッパ諸国と同じ西方教会が広く信仰されていました。この西方教会の聖書等で使用されている文字がラテン文字だったことが、同じスラブ言語でも異なる文字を使用している理由と考えてられています。

性別には関係ない、男性・女性・中性名詞

ヨーロッパ言語を勉強された方はよくご存じかもしれませんが、他の多くのヨーロッパ言語の名詞には性というものがあります。ポーランド語の名詞にも性があります。男性・女性・中性3つです。

以下のように、名詞はすべてこの3つに分類されます。名詞の意味が生物の場合はその「性別」で分類が決まる場合もありますが、多くは「性別」には関係なく、語尾で名詞を分類します(下表参照)。「一体それがどうした」と思うかもしれませんが、ポーランド語ではこの性がとても大切な役割を担います。

 

恐ろしやポーランド語の格変化

ポーランド語を話したい・勉強したいと思ったとき、大切なのがです。

いきなりですが、例文です。

  • I love you.
  • You love me

この「I」と「me」は、どちらも日本語なら「私」ですが、Iは「私」、me「私」と、「私」に付属する意味が違います。ポーランド語でも同じことが起きます。


それでは、「お茶」(herbata)を例に、ポーランド語の場合を確認してみましょう。
下の文をご覧ください。

  • To jest herbata. これはお茶です。
  • Ja piję herbaę. 私はお茶を飲みます。

herbataherbatęの変化にお気づきでしょうか。「お茶」から「お茶」の格にするために、herbataからherbatęに形が変化しました。ほかにも「お茶(の中に)」「お茶()」など、お茶(herbata)が文の中でどの役割、つまりどの格を担うかによって、形を変える必要があるのです。

なんと、ポーランド語にはこのような格が7種類もあります。ちなみにロシア語は5種類です。そして、名詞の性(男性/女性/中性)によって、異なるルールを適応して形が変わります。つまり、名詞だけで、名詞の性3種類×7つの格=21パターンの変化があるのです。

またこの形の変化は、動詞形容詞でも起き、それぞれ別の変化のルールを持ちます。ポーランド語を使うときは、常にこの語形変化が発生し、多様な異なる形のパズルをぱちぱちとはめ込むような形で文を作ります。日本語が母語の人にとってこれが如何に大変なことかはご想像の通りです。恐ろしや、ポーランド語。

人名も地名も常に変化

ポーランド語の特徴的なのは人名や地名さえも格変化させることです。

例えば「まや(Maya)」さんという方がいた場合、その人をポーランド語で呼ぶときは「まよ(Mayo)」となります。突然、まやさんが「まよ!」と呼ばれたら、反応ができないかもしれませんね。
また、佐々木という名字の方は、この名前が変化します。例えば「佐々木さんの家」と言いたい場合は以下のようになります。カッコ内は発音です。

dom Pana Sasakiego
(ドム パナ ササキィエゴ)
※Panとは英語のMr.の意味です。

自分の名前が「佐々木」から「ササキィエゴ」となるのは、多くの日本人にとっては違和感があることかもしれません。

また、地名も容赦なく変化します。
大阪はポーランド語でもOsakaですが、例えば「大阪で」となると以下のように変化します。

w Osace
(フ オーサッェ
※wは英語のinの意味です。

オオサカオーサッェでは、日本語ならばまったく響きが異なりますが、ポーランド語ではこれが普通です。「オーサッェでたこ焼きを食べました」とポーランド語で聞いて、「おおさつぇ?ああ、大阪のことだな」と理解するのには少し時間がかかるもしれません。

ポーランド語から日本語に翻訳する際は、格変化した固有名詞を変化した形のままカタカナ表記してしまわないよう、気を付ける必要がありますね。

おわりに

ポーランド語に接する機会は、日本ではなかなかありませんが、ポーランドでは製造業が発展しており、特に自動車産業で日本との貿易関係があります。また2016年には成田からポーランドの首都ワルシャワへの直行便も就航し、ポーランドと日本の間の人の行き来も活発になっています。
今後のポーランドの発展には注目の価値があるでしょう。


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