翻訳の精度を上げたいなら!

用語集を活用しよう

 

翻訳の品質を維持するために必要なものは、スタイルガイド翻訳メモリ指示書など、多岐にわたります。それらの中でも欠かせないのが「用語集」です。

今回の記事では、翻訳において用語集がどのような役割を果たしているのか、そして実際に用語集を作成するにあたってのポイントについてご紹介します。

はじめに:翻訳品質と用語集

翻訳品質の評価は、非常に難しい課題です。JTF(日本翻訳連盟)の調査結果からも明確なように、基準はバラバラで、当社で「品種」と呼んでいる、いわゆる好みに左右される要求事項も切り離すことのできない要素です。

しかし、翻訳には客観的に判断できる品質の「エラー」もあります。誤訳訳抜けとならんで、表現や用語の不統一も翻訳の品質に明確な悪影響を及ぼします。ソフトウェア画面や取扱説明書はもちろん、契約書、特許、プレスリリースなど、企業活動を行う上で必要になるあらゆる文書の翻訳おいて、表現用語が統一されていないと、一見流ちょうにみえる訳文であっても、読み進めるときに読み手に負担をかけ、時には誤解を与えることもあります。

翻訳は、複数人で作業することや文書を部分的に更新・追加することなども多く、用語の統一には、思っている以上に労力を必要とします。品質評価が難しいとはいえ、翻訳を依頼する際には、あらかじめ対策を立てて、エラーのリスクは最小限に抑えたいところです。

そこで非常に重要となるのが「用語集」です。では、用語集とは具体的にどのようなものなのか、そして作る時のポイントを順に確認していきましょう。

 

用語集とは

用語集とは、特定の分野で使用される単語や語句(用語)の意味と、その用語の使用方法について掲載したものです。翻訳作業で使用する用語集は、ある用語の原文と訳文を対訳表記したものに付属の情報を追加してあるものが多くなっています。

翻訳用の用語集には、業界用語、専門用語、略語などの特殊な用語はもちろん、マーケティングで使用するキャッチコピーや、一般的な用語だけれども決まった表記にしたい用語なども含めると、訳文に統一感が生まれやすくなるでしょう。

では用語集は、具体的に、どのように作成するのがいいのでしょうか。
 

用語集作成のポイント

1つの事柄に対して1つの訳語

用語集に記載する用語の選び方から考えてみましょう。まず、分野の指定は非常に重要です。分野が変われば、同じ原文用語を別の表記にすることがよくあります。また、文書の使用目的によっても表記は変わります。

原則として、用語集にある言葉は、その通りに訳出しなくてはいけません。1つの事柄に対して1つの訳語しかないことが用語表記の統一に好都合だからです。したがって、同一の内容の原文が重複しないようにMicrosoft Office Excelなどを使って確認できるようにしておくことをお勧めします。データの並び替え、ソート、重複データの検出といった作業が非常に簡単に実行できます。


 

「時」と「場合」を定義

とはいえ、単一の原文で複数の訳語を使い分けなければいけない状況が発生し得るということは、すぐにイメージできるかと思います。例えば、金融業界向けのソフトウェアマニュアルでは、”default”の訳語として、状況に応じて「規定値」「初期設定」「デフォルト(債務不履行)」などが出てきそうです。どう訳すように指定すべきか、しっかりとしたルールを決めないといけませんね。

そこで、補足の説明が必要となってきます。「備考」や「メモ」、「コメント」など、名称は何でも構いませんが、原文用語の解説や用例を追加情報として記載することで、その訳語を使用する「時」と「場合」を定義します。

先ほど例に挙げた”default”など、それぞれの訳語を使用する時と場合は「自明」で、定義は不要だと思いますか?
翻訳時の用語表記の選択において、クライアントや翻訳会社の指示なく判断基準が自明であることはありません。前述の通り、翻訳では、1つの文書を複数人で作業することや、翻訳済みの文書を部分的に更新・追加することもあります。このような状況で具体的な指示がないと、訳語の採択に揺れが発生してしまう可能性が大きいです。そのため、用語集には可能な限り、補足の説明をつけてみてください。説明もなしに、複数人が、時間軸を超えて共通の認識を持つというのはなんとも理想的ですが、それであればそもそも用語集などは不要になりそうです。


 

標準表記の規則を決定

分野は明確、用途も決まっているならば、どんどん対訳を登録していきましょう。分野によっては業界団体の対訳集が販売または公開されていることもあります。また、すでに翻訳済みのファイルから重要と思われる用語をピックアップしていくのもいい方法でしょう。

ただし、ここで気を付けなければいけないのは、それらの用語の標準表記の規則が決まっていないと、表記の統一という一番の目標が達成できなくなってしまう点です。例えば、カタカナ表記で長音符を付けるか付けないか。気を配らなければすぐに表記が揺れてしまいます。標準表記の規則は通常、「スタイルガイド」で規定しますが、用語集の用語は、そのスタイルガイドと矛盾がないように注意を払う必要があります。(スタイルガイドについては、こちらの記事を参照してください。)分野も使用目的も指定して、いつ使用するのかも明確。それでも、各用語を並べたときに表記規則が異なってしまっていては、用語集としての役割を果たせません。

動詞の登録は避ける

ここまで、用語を記載するポイントを説明してきましたが、次は、避けるべき用語について考えてみます。その代表格は「動詞」でしょう。動詞は用語集に登録しない方が無難です。そもそも、原文の動詞を訳文でも動詞として訳出するとは限りません。また、動詞の訳語を限定してしまうと、語のつながりが不自然になってしまいます(コロケーションがおかしい、などといいます)。ここを考慮しない表記の指定は、翻訳品質に大きな悪影響を及ぼしかねません。どうしても登録したいのであれば、慎重に時と場合を定義してください。
 

定期的な更新

最後に、用語集は最新の状態を維持するよう管理しておかなくては意味がありません。誰が、どのタイミングで更新するのか、明確な管理フローを決めて運用しましょう。多くの翻訳会社は用語集の作成、維持を代行するサービスを提供しています。まずは相談してみるのもいいアイデアだと思います。

まとめ

文書の翻訳にあたり、用語の表記の統一は非常に大切です。しっかりとした用語集があれば、明瞭で質の高い翻訳になる可能性が上がります。また、複数人が同時に作業するような大きなプロジェクトでも、文書の一貫性を保つのに役立ちます。
ただし、適切な作成、活用の方法を理解しておかないと、せっかく作っても無駄になってしまうこともあります。
こちらの記事が、将来的な翻訳作業で資産として生かせる、いい用語集づくりに役立てば嬉しいです。


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