コロナ禍を機に、リモートワークという形態の働き方が急速に広がっていきました。これにより、社内/社外を問わず、コミュニケーションの方法が大きく変わったのではないでしょうか。特に、これまで対面でやりとりしていたようなことでも、Zoomなどのツールを使用したWeb会議システムや、TeamsやSlackといったビジネス用チャットによりコミュニケーションをとることが増えた方が多いのではないかと思います。
この記事では、リモートワークが浸透しつつある今、どのようなことに気を付けてコミュニケーションを取ればよいか、特に文書(チャットやメールなど)でのやり取りにおける注意点について考えていきます。
スマートフォンでLINEなどのアプリを使用してコミュニケーションを取ることは、多くの方にとって日常となっていると言えるでしょう。『リモートワークの日本語 最新オンライン仕事術』(小学館新書・著/石黒 圭)では、このようなツールの進化により「書き言葉」「話し言葉」とは異なる「打ち言葉」が登場したと指摘されています。打ち言葉の特徴として以下の点が挙げられています。
打ち言葉にはこれまでの書き言葉よりも迅速なコミュニケーションが可能であるというメリットがあります。しかし、一方で以下のようなトラブルが生じるリスクがあることが指摘されています。

このようなトラブルを防ぐ、つまり「つまずかない」ようにするにはどうすればよいでしょうか。
「言葉につまずく」というのはあまり見慣れない言い回しかもしれませんが、『つまずきやすい日本語』(NHK出版・著/飯間浩明)からお借りしています。ここでの「つまずく」とは、「失敗する」「誤解を生む」ということで、相手を傷つける、意図が正しく伝わらない状態を指します。これによってビジネスをはじめさまざまな場面でトラブルが発生するのを避けるにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。
ここで気を付けておきたいのは、「つまずく」とは「間違える」と同じではないということです。弊社ブログ「的を得る」は誤用?「正しい」日本語と翻訳 にもあるとおり、言葉に「正解」「間違い」はありません。同じ言葉でも、ある時には正しく、ある時には間違いということがありえるのです。そのため、「正しい/間違っている」ではなく「的確に伝える」「誤解を生まない」ことが重要となります。

アサーション(またはアサーティブ)とは(出典:第1回 自分も相手も大切にする、自他尊重の自己表現「アサーション」)自分も相手も尊重した自己表現という意味です。自己表現には大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
先に述べたとおり、「打ち言葉」では相手を不快にさせないよう、感情面での配慮が必要になります。また、文字のみのコミュニケーションでは態度や動作などの言語面以外の表現が伝わらないため、言葉が自分の意図やニュアンスとは異なって伝わってしまう可能性がより高いと言えます。そのため、特に文書でのやり取りの場合は、上記3のアサーティブな表現になっているか、(意図せず)1や2のようなアサーティブではない表現を使用していないかどうか意識する必要があります。

前述の『つまずきやすい日本語』では、書くときの注意点として多義的な言葉を排除することが重要だと述べられています。つまり、複数の意味に解釈されないように気をつけるということです。たとえば、この本でも取り上げられている「頭が赤い魚を食べた猫」という表現は、さまざまな解釈が考えられます。このようなあいまいな表現は誤解を与えるため避けるようにしたほうがよいでしょう。
なお、文章の技術ということでは、他にも注意すべきポイントが多数あります。それに関する本もたくさんあり、最近では文章術のベストセラー本に載っているポイントをまとめた本(外部リンク:「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。)も出版されているので、そのような本をチェックしてみるのもよいかと思います。

読者が誰かを考えて、それによって文章や使う言葉を変える必要があります。会社内、特に同じ部署内の人同士であれば通じる言葉や表現であっても、外部の人には通じない可能性があります。これは、書き手が当然だと考える前提を読み手が持っているとは限らないためです。そのため、読み手との立場の違いを考慮して、足りない情報がないかどうかを確認し、適宜補足して伝える必要があります。

言葉で自分の伝えたいことを100%そのとおりに伝えることは不可能かもしれませんが、使い方次第で「つまずき」を少しでも減らすことはできます。この記事が円滑なコミュニケーションの一助になれば幸いです。