ビジネスと日本語:

関係性によって変化する言葉

ビジネスでよく使う言葉を「正しく」使っていますか?

先月の記事では、どのような表現が「正しい」あるいは「誤用」とされているのかを意識して使う言葉を選ぶことが大切だというお話をしました。日本語は相手やシチュエーションに応じて、言葉を使い分けることがありますが、よく理解せずなんとなく言葉を使っている人もいるのではないでしょうか。

今回は、主にビジネスの場で使われる、関係性によって変化する言葉についてご紹介します。日ごろ使っている言葉に、改めて目を向けるきっかけになれば幸いです。

1.させていただく

「させていただく」は、「相手の許可を得て、その行為を遠慮しながら行う」ときに使う表現です。
以下のような表現はよく目にしますが、どちらも相手に許可をもらう必要はありませんよね。

「明日は事務所を閉鎖させていただきます」
「品質管理を担当させていただきます●●です」

「させていただく」は相手に許可を求める表現ですので、相手に許可をとる必要がない場合は「させていただきます」とはせず、シンプルに「事務所を閉鎖いたします」「・・・を担当しております・・」とすればよいのです。

2.ご苦労様、お疲れ様

間違いです!と紹介されることの多い、定番フレーズかと思います。

「ご苦労様」は目上から目下に対して、相手をねぎらったり、感謝したりするときの言葉とされています。感謝を伝えるのであれば、「ありがとうございます」などお礼の言葉に置き換えるのが適切です。

「お疲れ様」も元々の意味はご苦労様とほぼ変わりません職場によっては挨拶としても利用されていて、必ずしも誤用とは言えませんが、少なくとも「ご苦労様です」に代えて目下から目上に対して使うべき言葉というわけではありません。

3.了解、了承、承知

ビジネスでよく使う合意や理解の返答です。相手やシチュエーションに応じて正しく使い分けていますか?

了解:「目上の人」が「目下の人」、または「同僚」に使う。

了承:「目上の人」が「目下の人」に使用する言葉。

承知:「目下の人」が「目上の人」に使用する言葉。「かしこまりました」も同じです。

使い分けを間違えると相手に不快感を与えてしまう可能性があります。ただし、使い分けに自信がなく、誰に対しても丁寧であればよいという考えで「承知いたしました」と「かしこまりました」を使用していると、相手によっては過剰丁寧でよそよそしく、慇懃無礼に聞こえることがありますのでご注意を。

4.小職、小生

小生、小職は自分をへりくだって言う言葉です。ただし、「同等または目下の相手」に使うもので、「目上の人」に使うのはよくないとされています。

目上の人に使用してしまうと、相手に不快感を与える可能性があります

役職の高い方が自分を謙遜するために使用する一人称ですので、目上の人、役職が高い人に使用しないようお気をつけください。「私」「わたくし」「当方」を使うのが無難ですね。

5.御社・貴社

どちらも意味的は同じですが、御社は話し言葉で使い、貴社は書き言葉で使います。この使い分けは就職活動(履歴書では「貴社」、面接では「御社」を使う)で覚えた方が多いのではないでしょうか。 

6.「いたす」と「なさる」

「いたす」は、「する」の謙譲語です。つまり、自分の行為をへりくだり、相手への敬意を払う場合に使います。

 どこかで聞いたことがあるような以下の表現:

・「●●様、どうかいたしましたか?」

・「●●様、どちらにいたしますか?」

これらは、相手の行動に対する文なので、「いたす」に丁寧語の「ます」を使用する表現は適切ではありません。尊敬語の「なさる」に丁寧語の「ます」を使用するのが正しいです。

・「●●様、どうかいたしましたか?」→「●●様、どうかなさいましたか」
・「●●様、どちらにいたしますか?」→「●●様、どちらになさいますか」

目上の人に対して「いかがいたしますか?」と聞いた場合は、「(私が)どうすればいいのか?」を聞いていることになります。一方、「いかがなさいますか?」と聞く場合は「(相手が)どうするのか?」を聞いてることになります。間違って使ってしまうと、意図することが正しく伝わらない場合がありますので注意しましょう。

まとめ

言葉の選び方で、失礼な印象を与える可能性があるのであれば、その言葉は避けておいた方がいいでしょう。また、意図した内容を伝えることから外れて、相手が言葉の「誤用」について気にしてしまうようならもったいないと思います。社会人として恥をかかないよう、そして相手に不快感や不信感を与えないよう、正しく言葉を使えるように心掛けたいものです。

社会では、年功序列が崩壊し、パワハラという行為が認知されてきたことで、誰に対しても丁寧な言葉を使うことが多くなってきました。目上/目下の基準による言葉の使い分けは今後変わっていくかもしれませんね。


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