翻訳の仕事ってなくなるの!?

機械翻訳と人手翻訳のいいところ

 

AIを使った機械翻訳、すなわちニューラルネットワーク機械翻訳が登場してから、機械翻訳の質は飛躍的に向上しました。いずれ人間による翻訳がなくなるのではないかと言われるほどその精度は向上しました。

しかし、蓋を開けてみると機械翻訳はエラーが多く、人の手を介さずに使うにはまだまだの品質です。そのため、機械翻訳による訳文に人間による編集を加えることが必要となります。この作業はポストエディットと呼ばれ、今後需要が増えることが予想されています。それでは、このポストエディットと機械翻訳を介さない人手翻訳は、どのように違うのでしょうか

機械翻訳+ポストエディットの生産性

はじめに人手翻訳と、機械翻訳+ポストエディットの生産性を比較してみましょう。ある研究によりますと、人手翻訳をした場合に1日あたりの平均翻訳量が3,500~4,000文字である作業者が2名が、1日ポストエディットをした結果、それぞれの作業者はの処理量は1日平均9,200~9,600文字に増えたとのことです。人手翻訳の処理量と比較すると、生産性が2倍以上に上がっていることが分かります。

機械は意味を理解していない

翻訳の生産性が格段に向上するので、機械翻訳を導入すると大きな効率改善とコストカットがもたらされるように見えます。しかし、機械翻訳の品質は「どんな文に対してでも安定的良い翻訳を供給できる」レベルにはまだ達していません。例えば、翻訳する上で原文の内容や文脈を理解することが必要であるのは言うまでもありませんが、機械翻訳は言葉の「意味」を一切理解していません。それを如実に表した誤訳が次の例です。

(原文)

個体維持のため摂食と外界からの刺激からの逃避がまず考えられる。

(機械翻訳文)

For maintaining individuals, it is possible to first consider *escape from eating and stimulation from the outside world.

この機械翻訳出力では、「外界からの刺激」と「摂食」の両方が「逃避」を修飾しているかのように読み取れます(*)。しかし、本来の意図は、(生命が)個体を維持するためには、「摂食」と、「外界の刺激から逃避すること」の2つが必要という意味であるため、正しく訳出されていないと言えます。このように機械翻訳は、字面を置き換えているに過ぎず、言葉の意味を理解した翻訳をしていません

上記の例のように、機械翻訳文を利用するにはその句構造、果たしては文構造まで書き換えなければならないことが多く、人の力による修正が求められる部分がまだまだ大きいのが現状です。中には、機械翻訳の利用は参考程度に留めて、ほぼ一から訳文を書き上げる人も少なくありません。

言葉は人間が使うもの

機械翻訳を使用することによって生まれる懸念点は他にもあります。翻訳作業時に機械翻訳によって提供される大まかな訳文が既にあるということは、いくら人間が編集しても機械翻訳らしい部分が残ってしまうということです。例えば、機械翻訳では対訳データベースに基づいて訳文を出力していますが、言葉が使われる文脈に沿って言葉が選ばれるわけではありません。このために、いわゆる「ニュアンスが違う」訳語が使われてしまうのです。それに比べて、人間が一から翻訳した場合であれば、機械翻訳による先入観がないため、融通の利いた翻訳がしやすいでしょう。人手翻訳の場合は、翻訳者の能力が反映されやすいとも言えます。

機械翻訳では対応できないコンテンツも多いです。マーケティング系文書や観光客向けの案内文書の翻訳は、直訳になりがちな機械翻訳には対応しきれないと容易に想像できます。

このように、機械翻訳を利用したポストエディットでは翻訳成果物を作成する際の生産性が高いメリットがあります。一方で、機械翻訳には限界があるため、人手翻訳がなくなることはないでしょう。また、人間が読んで理解する文章であれば、機械翻訳でも人間の目を通す(ポストエディットする)べきと考えるお客様が多いです。言語は人間が使うものだから、それを人間がチェックするのは当然です。今後は機械翻訳+ポストエディットと人手翻訳が共存すると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。一言で翻訳と言っても、一から人間が訳す人手翻訳と機械翻訳を使用したポストエディットがあり、今後「翻訳という仕事がなくなる」なんてことはなさそうです。短納期+低価格である機械翻訳+ポストエディットの需要は今後高まる一方だと予想されますが、だからと言って人手翻訳がなくなるわけではなく、これからも需要はありそうです。上手な使い分けができると良いですね。


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機械翻訳と人手翻訳、どちらを選ぶべきかわからない。
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