ポストエディターに求められるスキル

 

 

最近は機械翻訳という言葉をよく聞くようになり、ポストエディットによる翻訳サービスを提供する翻訳会社が増えています。この「ポストエディット」、具体的にどのような作業を行っているのかご存知ですか?今回は、今さら聞けない、ポストエディットの実際の作業と必要なスキルについて改めてご紹介します。

ポストエディットとポストエディター

ポストエディット (Post Editing) とは、機械翻訳の出力結果に対して専門の作業者による編集を加えることで訳文として仕上げる作業のことで、従来の人手翻訳 (Manual Translation) による翻訳に比べて低価格、短納期で翻訳作業をすることができます。機械翻訳の発達が著しい近年、人手翻訳に変わる選択肢として特に注目されているサービスです。

このポストエディットを担当する専門の作業者は「ポストエディター」と呼ばれ、昨今の機械翻訳/ポストエディット案件の増加に伴い、その需要は増加する傾向にあります。しかし、業界全体で見てもまだまだこのポストエディターが不足しているのが現状です。現在のところ翻訳者、チェッカーがポストエディターに転身するケースが多いですが、能力、適性の問題、または翻訳と違って抵抗があるなどの理由で、ポストエディットへの適応もいまひとつ進んでいるとは言えません。一方で、専門職としての若手ポストエディターの育成など、業界としても需要に対する対策が始まっています。

ポストエディット作業

では、ポストエディットの作業とは、どのようなものでしょうか。この内容については国際規格 ISO 18587 で詳しく定義されていますが、一言で言うと、機械翻訳エンジンによる不完全な出力結果に対して、人が編集することにより訳文として成立する文章に仕上げる、といったものです。ここでは簡単に、ポストエディターが実際にどのように作業をしているのかをご紹介します。

①機械翻訳の出力結果を判断する

機械翻訳の出力結果を瞬時に判断し、どの程度活用できるかを決定します。ポストエディットの基本的な考え方として、「機械翻訳を活用する」という観点から、これをどこまで活用し、どこを編集するかを決定します。

②出力結果を編集する

出力結果を判断したら、編集していきます。あらかじめ入力されている出力結果を活用しながら、訳文として十分利用できる品質にまで仕上げます。実際の作業としては、機械翻訳出力結果からの編集距離/ワークロードおよび要求される品質の違いにより、訳文を再構築していくような作業から、シェイプ、ブラッシュアップしていくような作業までさまざまです。

その他の作業

その他、人手翻訳同様、案件によってスタイルガイド、用語集など翻訳資料への準拠が求められます。また翻訳メモリなどの翻訳資産が活用される場合、翻訳メモリの適用 + 新規箇所に対する機械翻訳の適用となり、翻訳メモリのファジーマッチ箇所の編集も必要になる場合があります。また案件により別途、その他の品質管理工程をとる場合があります。

ポストエディットの品質「どこまでやるか」

ポストエディターに求められるスキル上記のようにポストエディット作業を行うわけですが、ここまで読んで、「で、どこまでやるの?」と思われたかもしれません。現状では、各翻訳会社/サービスプロバイダによってポストエディットで要求される品質がそれぞれ定義されています。翻訳会社によっては機械翻訳出力結果に必要最小限の編集を加え、日本語として最低限読める程度にする、といったサービスを提供している企業もありますし、なるべくお客様のご要望にお応えできるよう、一定以上の品質で十分に利用可能な翻訳を提供している企業もあります。

ポストエディットに必要なスキル「うまくやる力」

それではポストエディターと翻訳者/チェッカーとの違いは何でしょうか。ポストエディット作業には、人手翻訳で言う翻訳者とレビュア/チェッカーと共通する翻訳スキルが要求される一方、特に固有のスキルとして、「うまくやる力」、あるいは「適応能力」が要求されます。ポストエディットでは、前述のサービス定義に合わせた「十分な」品質で作業をすることが重要になってきます。機械翻訳に対する編集が不足しても、出力結果にかかわらず過度に高品質な訳文にしても、よいポストエディットとは言えません。「過不足なく」作業をすることにより、パフォーマンスを確保しながら品質とのバランスをとることが肝要で、この加減を判断し、適応していくこと、また、現状品質基準/要求が案件ごとに異なり、また流動的であることから、作業指示や品質要求を作業方法に柔軟にフィードバックさせていける能力が、従来の翻訳、チェック作業に比べてより必要となってきます。

まとめ

以上、今回はポストエディットの作業と必要なスキルについてご紹介しました。必ずしもすべてのコンテンツ、文書に対してポストエディットが適しているわけではありませんが、ローカリゼーションを中心にマーケティング翻訳、マスメディア翻訳など、ポストエディットの需要は確実に高まってきています。また機械翻訳エンジンの進化、変化に伴い、ポストエディターに求められる能力も徐々に変わってきています。今後も機械翻訳とポストエディットの動向に目が離せませんね。


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