いまさら聞けない

「翻訳のISO規格ってどんなもの?」

 

翻訳のISO規格って?

翻訳サービスに関する国際規格があることはご存知でしょうか?

ISO17100: 2015(翻訳サービス-翻訳サービスの要求事項、以下「ISO17100」)は、2015年5月1日発行された翻訳サービスに関する国際規格です。この規格では、仕様に適合する高品質の翻訳サービスの提供に必要な過程・資源その他の要求条件が定められています。

翻訳の品質そのものに対する規格ではなく、品質の高い翻訳を提供するためのワークフローを定義しているのですが、簡単に言うと、「どんな翻訳者に依頼し、どのような工程で作業を行うか」ということが決められているのです。

「品質の高い翻訳を提供するためのワークフロー」言葉だけではなかなかイメージしづらいところですが、実際にどのようなプロセスが求められるのでしょうか? 

実際の作業プロセスはどんなもの?

ISO17100の翻訳ワークフローは、大きく分けて、制作前・制作・制作後の3つのプロセスに別にそれぞれの必要要件が定められています。

出典:一般財団法人 日本規格協会 HP

では、ISO17100が規定する品質の高い翻訳を提供するためのプロセスとは具体的にどのようなものでしょうか?

制作前(前準備)と制作後(納品後対応)も非常に重要なプロセスですが、成果物の品質を最も左右するプロセス「制作プロセス」に重点をおいて、詳細を見てみましょう。

ちなみにですが、制作プロセスの一連の流れは、翻訳コーディネーターおよびプロジェクトマネージャーが管理します。ここでは管理者をプロジェクトマネージャー(PM)とします。

① 翻訳

まずは翻訳の工程です。

以下の資格要件に基づき、プロジェクトマネージャーが翻訳者を選定します。

  1. 翻訳に関する高等教育の学歴を有すること
  2. 翻訳以外の分野での高等教育の学歴と2年間の翻訳実務経験を有すること
  3. 5年間の翻訳実務経験を有すること

この資格要件に加えて、翻訳者の経歴やバックグラウンドを参考に、翻訳対象文書の内容や作業内容を考慮して、作業を担当する翻訳者を決定します。

翻訳作業を行う際は、翻訳者は作業の指示書、用語集や参考資料などの内容に沿って、翻訳作業を進めます。また、品質保証の観点から、翻訳者は翻訳完了後、自身でセルフチェックを行うことが義務付けられています。

② チェック(必須)

 翻訳完了後、チェック担当者がバイリンガルチェック(原文と訳文を比較しながら行うチェック)を行い、誤訳や訳抜けがないか、指定された用語が正しく使用されているか、指示通りの文体になっているかなどを確認します。

チェック担当者にも一定の能力が求められるため、事前にトライアル試験に合格した作業者によって行われます。

③ チェック(任意)

専門的な内容の文書やより高い品質が求められる案件については、上記バイリンガルチェックの他にモノリンガルチェックやプルーフリーディングを行います。

プルーフリーディングを行うことで、不自然な表現を修正し、正確でより自然な文章にします。

また、各分野の高度な専門知識を持った作業者がチェックを行うことにより、専門用語が正しく使用されているか、内容が正しく解釈された上で訳出されているかを確認することができます。

④ 最終検品(必須)

プロジェクトマネージャーが納品前の最終の確認を行う工程です。

翻訳の仕様が満たされていること、規程のプロセスで作業が行われたことを確認の上、お客様へ納品されます。

お客様の予算や納期、依頼内容によって作業内容が変わる場合もありますが、上記のプロセスで作業を進めることで品質維持を行います。

ISOを取得するメリットは?

「高品質な翻訳」と一口にいっても、翻訳のサービスレベルをはかるのは難しいものです。

ISO17100を取得により翻訳サービスを提供する側は、実際に作業を行う翻訳者、チェッカーなどの作業者の能力、作業プロセスを保証することで国際規格に基づく翻訳サービスを提供していることを証明することができます

「ISO17100」を取得しているかどうかを指標にすると、翻訳サービスの質をはかる材料になりますので、翻訳会社を選びやすくなるかもしれませんね。


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