CAT虎の巻:
SDL Tradosのいろは
CAT虎の巻:
SDL Tradosのいろは
IT革命からはや20年。インターネットの商業化により私たちの生活はとても便利になりました。翻訳業界も、昔は電話・郵送でのやりとりが中心でいろいろなことに手間や時間がかかっていましたが、今はシステムやメールのやりとりで、早ければ半日で完了するプロジェクトも少なくありません。
その潤滑油となっているのがSDL Tradosを筆頭とした翻訳支援ツール(CATツール)です。CATツールを使うことで、過去の翻訳のデータを蓄積し、再利用することが容易になり、翻訳作業の効率化と品質の向上が実現されるようになりました。今回はCATツールで最も一般的に利用されているSDL Tradosの使い方をご紹介します。Trados初心者の方、うまく使いこなせず苦労されている方のお役に立てれば幸いです。なお、CATツールとは何かをまとめた記事につきましてはこちらをご参照ください。
パッケージの取り込み方
翻訳会社からTradosを使用する案件を依頼された場合、まず、.sdlppxという拡張子を持つファイルがプロジェクトコーディネーターから配布されます。こちらが俗にいうTradosパッケージというもので、こちらをTradosのアプリケーションに取り込むことから翻訳のお仕事がスタートします。
以下の手順でパッケージを取り込むことができます。
返却パッケージの作り方
翻訳完了後、納品物を翻訳会社に納品する際には返却パッケージを作成します。
以下の手順で返却パッケージを作成することができます。
通常パッケージの形式で配布されたプロジェクトには翻訳メモリ(TM)や用語集が設定されている場合がほとんどなのですが、何らかの理由でその設定が外れていたり、それらを手動で設定することが要求されたりする場合もあります。そうした場合の対応方法を以下にご紹介します。
TMの設定
以下の手順でTMを設定することができます。
[プロジェクトの設定]>>[すべての言語ペア]>>[翻訳メモリと自動翻訳]>>[追加]>>[ファイル共有タイプの翻訳メモリ]でTMがある場所を指定して、選択するとTMが設定されます。
用語集の設定
また、以下の手順で用語集を設定することができます。
[プロジェクトの設定]>>[用語ベース]>>[追加]>>[参照]で用語集のある場所を指定して、選択すると用語集を設定することができます。この時、用語集はExcelやテキストの形式ではなくマルチターム(.sdltb)の形式である必要があります。
Tradosで翻訳作業を行う画面はエディタと呼ばれます。通常は左側に原文が表示され、右側に翻訳を入力します。ここでは初心者の方がTradosで作業する際に最低限知っておきたい機能をご紹介いたします。
1.基本操作
TMが設定されている場合、エディタ画面にカーソルをあてると、TMが自動的に入ります。エディタの中央部にパーセンテージで記載された表示が現れますが、それらをマッチ率といい、そのマッチ率に従い翻訳のワークロードが決まります。TMがあたっていると、エディタ上部にTMが表示され、今回の作業対象となる原文と比較してどこが異なるか、赤字で表示されますので、それに従い必要に応じて訳文に変更を加えます。
2.訳語検索
また、エディタ上でTMで参照したい訳語をハイライトし[訳語検索]をクリックすると、過去にどのような訳語で翻訳されていたかを知ることができます。翻訳するうえで過去の翻訳と訳語を統一することは非常に重要ですので、こちらの機能はぜひ活用してください。
3.ステータスの変更
翻訳が完了したセグメントはCtrl+Enterで確定することができ、確定すると訳語がTMに登録されます。うっかりファイルを保存せずに閉じてしまった場合などでも、TMが登録されていれば翻訳し直す必要がないので、翻訳が終了したセグメントは毎回Ctrl+Enterで確定するようにしてください。一度にまとめてステータスを変更したい場合は、最初のセグメントを選択してからエディタの一番下までスクロールし、Shiftを押しながら最後のセグメントをクリックするとセグメントが全選択されるのでその状態で右クリックし、[分節のステータスの変更]>>[翻訳済み]を選択します。すると、すべてのセグメントが翻訳済みのステータスになります。 なお、この操作ではステータスが変更されるだけです。訳語はTMに登録されないのでご注意ください。
今回は、Trados初心者の方々に最も基本的な操作方法をご紹介させていただきました。Tradosにはまだまだいろいろな機能があるので少しずつマスターしていきましょう。