日本語を英語に翻訳する際、自然な英文にしたい!でもどこかしっくりこない。なんとなく不自然な英語になってしまう。そんな経験はありませんか?
日本語と英語では、もちろん文法が異なりますし、作文の裏側にある発想も異なります。
そのため、日本語をそのまま英語にしてしまうと、不自然な英文になってしまうことがよくあります。
今回は、和文英訳において、自然な英文にするために気を付けるべき3つのポイントを集めてみました。
日本語では名詞が比較的好まれます。例えば、このような文をみたことがありますか?
名詞がたくさん使用されていますが、この文を見てもさほど違和感を抱かないと思います。
では、この文を英語にしてみるとどうでしょう。
前置詞を使った名詞による後置修飾で名詞が連続し(下線部)、なんだか不自然でまどろっこしいです。
それでは、日本語では名詞になっている単語を、動詞にして訳出してみるとどうでしょうか。
「拡大」を名詞の「expansion」ではなく動詞の「expand」で訳出してみると、名詞が連続していた下線部が短くなり、それだけでだいぶスッキリしました。
「拡大する」もそうですが、日本語では漢語動詞の場合、「する」をとって名詞にしてしまった方がすっきりとします。
その一方で、英語は動詞が名詞の元となっているケースが多いため、動詞にしてしまった方が簡潔で自然な英文になります。(expand→expansion)
実際、名詞を乱用してしまうと、修飾だらけの非常に読みにくい文になるため、英文ライティングでも動詞を名詞化して使わないことが推奨されています。(詳しくはこちらの記事をご覧ください)
この違いを踏まえて、英語にしたい日本語で名詞がたくさん使われている場合は、訳出する際に動詞にしてみると、より自然な訳文に近づけることができるかもしれません。

二つ目のポイントは「主語を頭でっかちにしない」です。次の例文を見てみましょう。
そのままの文構造で訳出すると、以下のようになります。
この文を見ると、主部(下線部)が非常に長くなり、動詞(赤字)が文末の近くにきているのがわかると思います。
日本語は文の構造上、動詞が文末に来るため、主部の長さは取り沙汰されません。むしろ、日本語では主部が巨大な文をよく見かけます。
一方で、英語では、このような主部が長い文は好まれません。主部をできるだけ短くして、動詞を文の早い段階で出してしまうことが望ましいです。
これを踏まえて、主語ができるだけ短くなるように書き換えてみました。
いかがでしょうか。動詞の位置が変わっただけで、英文の印象もずいぶん変わって見えるとおもいます。このように、日本語を英語に訳するときは、頭でっかちな日本語の文に引きずられず、できるだけ主部の簡潔な文構造になるように意識してみるとよいでしょう。
3つ目のポイントは「代名詞を乱用しない」です。
以前、本ブログの「なぜか読みにくい訳文の正体」シリーズで、英文和訳における主語の取り扱いについてご紹介しました。
英語では文の構造上、主語が必ず記載されます。その一方で日本語では往々にして主語が省略されるので、毎回英文に記述された主語をそのまま訳出すると、日本語ではまどろっこしくなります。そのため、以前の記事では英文和訳をする際に、必要に応じて主語を省略するテクニックをご紹介しました。
和文英訳の場合はその逆です。日本語では、主語が省略されますが、英語では主語を省略したまま文を作れないので、主語を補う必要があります。
受動態を使ったりしてある程度ごまかすことはできますが、受動態を使いすぎることも英語では好まれませんので、場合によっては、原文に記載のない情報を補う必要があります。
ここで注意をすべきなのが「代名詞を乱用しない」ということです。”it”や”they”といった代名詞を不用意に乱用すると、不自然な英語になるどころか、読み手に誤解を与えかねません。
たとえば朝日新聞のこちらの記事から、以下の例文を見てみましょう。
最後の2文について、主語が省略されているのがお分かりいただけると思います。英語に訳出する際は、この省略された主語を補わなければなりません。
文脈から、2文の主語は「ミネルバ2―1」であることが分かるのですが、2文ともで「MINERVA-II1」と訳出するとそれはくどいですし、2文とも「they」で訳出すると、英語として不自然ですし、少し不親切です。

それでは、どうすればよいのでしょうか?一般的に英語は「繰り返しを嫌う言語」とされており、同じ表現や単語が何度も何度も使われると不自然であるとされます。
そのため、省略された1文目と2文目で表現を変えながら主語を補うと自然になります。
幸いにも、この記事では「ミネルバ2―1」が「小型探査ロボット」であることが冒頭で明記されていますので、1文目と2文目で「robots」「rovers」「they」など表現を変えて訳出するとよいでしょう。
特に長い文書では、文中に主体が多く出てきて「they」が何を指しているか分からない、ということも起こり得ます。代名詞だけで終わらず、できるだけ具体的な語を補うとよいでしょう。
いかがでしたでしょうか。
ある言語を異なる文化の中で生まれた別の言語に訳出するには、文法だけでなくそれぞれの言語の癖や特徴の違いなども知っておく必要があります。今回の3つのポイントは、その違いのほんの一部ですが、和文英訳時のヒントになりますと幸いです。