地図上では少し小さめですが、デジタル化が進んでおりインターネット上では非常にアクティブな国、エストニア。首都タリンの旧市街を歩くだけで、時代の深みと最新テクノロジーを同時に感じられます。
本記事では、エストニアという国と、その言語であるエストニア語の多彩な魅力をご紹介いたします。
エストニアは北ヨーロッパのバルト三国の一端を担い、人口約130万人・国土は北海道の半分程度の小国ですが、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関に加盟し、国際社会で確固たる存在感を示しています。
過去には中世からデンマーク、スウェーデン、ドイツ、ロシア(ソ連)による支配を受けてきた歴史を持ち、1991年にソ連から独立を果たしました。歴史の中では特に「歌の革命(1988–1991)」と呼ばれる非暴力の独立運動は世界的にも有名で、集団で歌うことで自由への希望を共有した文化的な独立の象徴となっています。
※エストニアの都市「タルトゥ」
国内には数百の湖や広大な森林があることで「自然と共生する文化」が息づいており、首都タリンの旧市街は中世からの姿を残し、ユネスコ世界遺産にも登録されているほど、美しい街並みが広がっています。
バルト海沿岸や島々も人気があり、夏にはリゾート地としても楽しめる風光明媚な環境が揃っています。
エストニアは1990年代から国内の行政サービスをオンライン化、2002年には国民に電子IDカードを発行し、99%の国民サービスがネットで完結する仕組みになっています。
2014年には世界初の e‑Residency(電子居住)制度を導入。現在10万人以上がエストニアの「仮想国民」として法人設立や事業運営が可能になりました。また、電子投票、e‑Health、e‑Tax、e‑Schoolなども整備され、「インターネットが基本的人権」と言われるほどの利便性を誇り、デジタル化が進んでいます。
母語話者は国内約90万人、国外にも約16万人存在し、合計約110万人。2021年国勢調査ではエストニア語を「理解できる/話す」人口は84%を占めます。格変化が14種類存在したり、音の長さによって意味が変わるなど、言語として魅力的な要素が詰められています。
ヨーロッパでは珍しく、フィンランド語と系統が同じフィン・ウゴル系に属し、フィンランド語、ハンガリー語、サーミ語、ヴォロ語、コミ語など多くの言語が含まれています。非インド・ヨーロッパ語族として独立性が強く、言語として非常に興味深い存在です 。
エストニア国民の76%が外国語を話し、中でも英語とロシア語が主流となっています。
エストニアは教育レベルが高いため、若年層を中心に英語比率が高まっており、英語教育の普及度はEU平均以上の高水準です 。
中央ヨーロッパやロシア諸国との交流も盛んで、多言語に触れる日常が国民文化として根づいています。
エストニア語には14種類もの格変化(主格・分格・具格など)があり、「see(これは)」を例にすると、以下のように変化していきます。
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格名 |
変化形 |
意味の例 |
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主格 |
see |
これは(主語) |
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属格(所有格) |
selle |
これの |
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分格(部分格) |
seda |
これを(部分・未完了対象) |
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入格 |
sellesse |
この中へ |
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内格 |
selles |
この中で |
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出格 |
sellest |
この中から |
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向格 |
sellele |
この方へ |
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接格 |
sellel |
この上で/このそばで |
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奪格 |
sellelt |
この上から/このそばから |
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様格 |
selleks |
これになる/これとして |
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依格 |
selleni |
これまで |
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具格 |
sellena |
これとして(役割・状態) |
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欠格 |
selleta |
これなしで |
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共格 |
sellega |
これと一緒に |
「tema(彼/彼女)」(および短縮形「ta」)は、エストニア語における三人称単数代名詞です。
「tema」は助詞や性別を持たないため、男女の区別が一切なく、he/she/it の意味を中立に表現します。そのため、英語やフランス語のように性別によって別の代名詞を使う言語とは異なります。
機械翻訳では「ta」や「tema」は文脈に応じて「he」または「she」と訳される一方で、エストニア語では性を示唆する情報は文脈からのみ判断されます。
エストニア語には英語や日本語のような「未来形」は存在しません。将来の出来事を表す場合でも、現在形の動詞+時間を示す副詞で代用します。
例文)
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Ma lähen homme poodi. |
「私は明日その店に行きます」 (動詞は現在形 “lähen=行く”、未来の意味は副詞 “homme=明日” によって担われている) |
この文章構造によって、文法レベルでは時制を変えずに現在形だけで未来の話も表現できます。
エストニア語の母音・子音には、短音・長音・超長音の三段階があり、以下のように長さの違いが全く違う意味を生むこともあります。
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発音 |
単語 |
意味 |
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単音 |
lina(リナ) |
リネン、シーツ |
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長音 |
linna(リンナ) |
都市の(属格など) |
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超長音 |
linna:(リッンナ) |
都市へ |
上記の例では長音、超長音が同じスペルですが発音で意味が変わり、文章では聞き分けることができないため、文脈や構文から判断します。(辞書表記などでは長さを明示するために「:」や他の記号を用いることがあります)
現在のところ機械翻訳の場合、Google翻訳やDeepLでは一部エストニア語に対応していますが、格変化や長音のニュアンスが難しく、学習者にとっては「機械翻訳だけでは心許ない」場面も多いのが実情です。
川村インターナショナルでは、エストニア語への翻訳サービスも承っていますので、気になる点やご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。