医療医薬翻訳事情
~コンピューターと医薬/医療の新たな関係~

 

 

医療医薬翻訳事情
~コンピューターと医薬/医療の新たな関係~

 

30 年位前まで、医薬の研究者たちは多くの時間を図書館にこもって疾患の症状を調べ、効果のありそうな化合物に関する文献を読み、合成に使えそうな反応を何日もかけて探すのが普通であった。医療の現場においても、医師たちは目の前の患者さんの症状を自分の経験や知識に照らし合わせて治療法を決定した。

しかし、IT の進歩は医薬品の開発、製造あるいは医療のやり方を大きく変えた。論文の殆どは電子化され、その内容は瞬時に検索できるようになったし、ケミカルアブストラクトと呼ばれる世界最大のデータベースには約 2 億個の化合物と 8 千万以上の化学反応、2 千万件以上の医学論文情報などが収められ、日々更新されている。

研究者たちは、それらのデータを自在に検索し、必要な情報を瞬時に入手することができる。医療現場でも CT で得られた画像を元に、目の前の患者さんの体の内部まで見ながら診断できるようになった。

この様に、IT の役割は情報の収集と検索であり、判断を伴う部分は、人間が担当していた。

ところが、近年の AI の進歩によって、遺伝子配列のデータからドラッグデザインが、数万の研究論文の解析から新たな治療法の提案が、数億のカルテから一人の患者さんに対する正確な診断、治療方針までもが得られる時代が目の前に来ている。そのような状況から、人間の仕事が IT に取って代わられるのではないか、といった悲観的な見方も増えてきている。

果たして本当にそうだろうか?

山中伸弥教授が iPS 細胞を作り上げるまでは、すべての臓器の細胞に分化できるのは、受精卵から得られる初期段階の細胞(ES 細胞)のみであると考えられており、細胞分化の最終段階にある皮膚の細胞を分化の初期段階に戻す事など、不可能と考えるのが常識であった。

しかし、この常識は覆され、現在では、再生医療は勿論のこと、着目する患者の細胞から得られる iPS 細胞を用いることによって病気の原因を探るといった、ES 細胞ではできない新たな応用も実用化段階に入っている。

このように、現状に立脚しつつも、新たな視点から解決すべき問題や課題を設定し、達成すべきゴールラインを自ら引くことが、人間の持つ創造的で優れた能力であり、IT が苦手とする分野であるように思う。

IT の早くて正確な情報処理能力と人々の持つこれらの創造性は対立するものではなく、かえって、協同していくことによって新しい世界を作り上げることができるのではないだろうか。


中塚 隆 理学博士
(株)川村インターナショナル スペシャリスト

東京大学化学科卒業。東京大学理学系大学院博士課程修了。(専門:有機合成化学)
大学院卒業後、大手食品会社の生物医学研究所に就職し、創薬を目的とした有機合成に携わる。
その後、免疫系をターゲットとした創薬研究のほか、FDA提出書類レビュー、GMPやGLP関連業務、マネジメント業務を担当した。
2015年に(株)川村インターナショナルスぺシャリストに就任。
医療/医薬分野の翻訳案件のレビューを担当するほか、社内の医薬翻訳関係者の人材育成にも力を入れている。なかでも毎週開催される勉強会は、文系出身のメンバーにも分かりやすいと評判の講義である。


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