2025年1月、欧州委員会は「統合版MDR(Regulation (EU) 2017/745)」1)を公開しました。これは、これまで発行されてきたすべての amendment(改正)と correction(訂正)を統合し、発行時点の法令条文が一つにまとめられた“最新の読みやすい形”のMDRです。
中でも、UDI(Unique Device Identification)体系はMDR規制の中核をなす仕組みです。その技術的詳細はAnnex VIに定められており、ラベリング・包装表示・EUDAMED 登録など、多くの実務の基盤となっています。
この記事では、MDR Annex VI の確認がなぜ重要なのか、そして各 Part の概要をシンプルに整理します。最後に、全文対訳の参考資料もご紹介します。
MDR(Medical Device Regulation:EU医療機器規則)は、EU域内で流通する医療機器の安全性・品質・トレーサビリティを確保するための法規制です。
UDI制度やEUDAMED登録など、実務に直結する要件が詳細に定められており、従来のMDD(Medical Device Directive:医療機器指令)に代わって適用され、PMS(Post-Market Surveillance:市販後監視)やVigilance(安全性監視)の強化、製品情報の透明性向上を目的としています。
そのため、設計・製造だけでなく、ラベリングやデータ管理、規制対応体制の整備まで含めた包括的な対応が求められます。
MDR Annex VI には、UDI制度の技術的仕様がまとめられています。
UDIの構造(Basic UDI-DI、UDI-DI、UDI-PI)や、デバイス登録に必要なデータ項目、経済事業者の登録情報、UDIキャリア(バーコード等)の定義や配置ルールが記載されています。
ラベリングやパッケージ表示の判断、EUDAMEDへのUDI-DI登録、Basic UDI-DIの管理、社内各システムとの照合ルールなど、多くの“実務上の判断”が Annex VI を根拠として行われます。そのため、一度理解することで、今後のEUDAMED運用やラベル改訂において長く役に立つ知識となります。
UDIは、MDRにおける製品の識別の基盤となるコード体系です。
Article 27 にも示されるように、UDIは次のような目的で導入されています。
Basic UDI-DI は技術文書や NB 証明書にも必ず参照され、UDI-DI/UDI-PI は個々の製品や包装単位の識別の中心となります。そのため、UDI制度の「仕様書」である Annex VI は、MDRの構造の中でも実務に大きな影響を与える附属書の一つといえます。
※Article 27に明記はありませんが、UDI制度の効果として解釈されています。
Annex VI は大きく3つのパートで構成されています。
デバイスおよび経済事業者の登録情報に含めるべき項目が規定されています。
Part A はEUDAMEDの Actor/Device 登録で提出すべき情報要件を体系的に定めています。
UDI-DIを登録する際に必要となるデータ要素が列挙されています。
例:
社内マスタや PLM システムを整備する際に、この Part B の項目は「基礎的仕様」となります。
Part C は Annex VI の中でも実務で頻繁に参照する部分です。
UDIラベルの作成、包装単位ごとのUDI付番、バーコード選択、印刷仕様の判断など、Part C の内容が重要な根拠になります。
今回公開された統合版MDRは、2017年の原文に加え、これまで発行された amendment と correction を1つの読みやすい文書に編集し直しだ“集約版”です。ただし、統合版のAnnex VIには2026年または2028年に発効する改正内容(32023R2197、32025R1920)は含まれていません。
重要なのは、統合版によって条文へのアクセスが容易になり、実務者が UDIに関する規則を確認しやすい環境が整ったことです。このタイミングでMDRの必要部分を読み直すことで、実務の抜け漏れを防ぐことができます。
今回の統合版のAnnex VIには以下の改正が含まれません。これは、将来適用の委任規則(2023/2197, 2025/1920)が反映されていないためです。
このブログの付録には、Annex VIの原文(英文)と日本語訳を対応させた資料を掲載しています。
原文と日本語訳を対比しながら確認することで、条文特有の用語や表現の意味を正確に把握でき、また海外パートナーと共通の理解を深めることが可能になります。
資料の一部を以下にご紹介します。
| ANNEX VI | 附属書VI |
| INFORMATION TO BE SUBMITTED UPON THE REGISTRATION OF DEVICES AND ECONOMIC OPERATORS IN ACCORDANCE WITH ARTICLES 29(4) AND 31, CORE DATA ELEMENTS TO BE PROVIDED TO THE UDI DATABASE TOGETHER WITH THE UDI-DI IN ACCORDANCE WITH ARTICLES 28 AND 29, AND THE UDI SYSTEM | 第29条第4項および第31条に基づいて機器および経済事業者の登録時に提出すべき情報、第28条および第29条に基づいてUDI-DIとともにUDIデータベースに提供すべきコアデータ要素、ならびにUDIシステム |
| PART A | PART A |
| INFORMATION TO BE SUBMITTED UPON THE REGISTRATION OF DEVICES AND ECONOMIC OPERATORS IN ACCORDANCE WITH ARTICLES 29(4) AND 31 | 第29条第4項および第31条に基づいて機器および経済事業者の登録時に提出すべき情報 |
| Manufacturers or, when applicable, authorised representatives, and, when applicable, importers shall submit the information referred to in Section 1 and shall ensure that the information on their devices referred to in Section 2 is complete, correct and updated by the relevant party. | 製造業者、該当する場合は認定代理人、さらに該当する場合は輸入業者は、第1節に記載された情報を提出し、また、第2節に記載された当該機器に関する情報が、関係当事者によって完全かつ正確で、最新の状態に維持されていることを確保しなければならない。 |
| 1. | 1. |
| Information relating to the economic operator | 経済事業者に関する情報 |
| 1.1. | 1.1. |
| type of economic operator(manufacturer, authorised representative, or importer), | 経済事業者の種類(製造業者、認定代理人、または輸入業者)、 |
| 1.2. | 1.2. |
| name, address and contact details of the economic operator, | 経済事業者の氏名、住所および連絡先詳細、 |
| 1.3. | 1.3. |
| where submission of information is carried out by another person on behalf of any of the economic operators mentioned under Section 1.1, the name, address and contact details of that person, | 1.1節に記載された経済事業者のいずれかに代わって他の者が情報の提出を行う場合、その者の氏名、住所および連絡先の詳細、 |
| 1.4. | 1.4. |
| name address and contact details of the person or persons responsible for regulatory compliance referred to in Article 15. | 第15条に規定する規制遵守の責任者(複数の場合を含む)の氏名、住所および連絡先詳細。 |
| 2. | 2. |
| Information relating to the device | 機器に関する情報 |
| 2.1. | 2.1. |
| Basic UDI-DI, | Basic UDI-DI, |
| 2.2. |
2.2. |
| type, number and expiry date of the certificate issued by the notified body and the name or identification number of that notified body and the link to the information that appears on the certificate and was entered by the notified body in the electronic system on notified bodies and certificates, | 第三者認証機関が発行した証明書の種類、番号および有効期限、当該認証機関の名称または識別番号、ならびに、認証機関および証明書に関する電子システムにおいて当該認証機関が入力した、証明書に記載されている情報へのリンク、 |
| 2.3. | 2.3. |
| Member State in which the device is to or has been placed on the market in the Union, | 当該機器がEU内で上市される(またはされた)加盟国。 |
Annex VI は、UDI制度の技術仕様・データ要件・登録仕様が集約された、MDR実務の中でも非常に重要な附属書の一つです。
統合版MDRによって制度全体像にアクセスしやすくなった今、Annex VIを含めて理解を深めることは、ラベリング・包装表示・EUDAMED登録を進めるうえで大きな助けになります。
Annex VI の全文対訳(英文・和文の対照版)は、以下のページからダウンロードできます。
実務の参照資料としてぜひご活用ください。
※本記事の内容は掲載時点の情報に基づいており、法規制の改正等により最新の状況と異なる場合があります。また、本翻訳は公式な正文ではなく、理解を補助するための参考資料です。
本ページの利用により生じたいかなる問題についても、当社は責任を負いかねます。実務への適用にあたっては、必ず原典となる法令・公式文書をご確認ください。
1) 統合版MDR
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02017R0745-20250110
2) Delegated Regulation 2023/2197 コンタクトレンズのUDIの割り当てに関する改正規則
3) その適用日を変更する規則
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2023/2197/oj/enghttps://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2025/788/oj/eng
4) Delegated Regulation 2025/1920眼鏡フレーム、眼鏡レンズ、及び既製老眼鏡に対するUDIの割り当てに関する改正規則
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32025R1920
川村インターナショナルは、プロフェッショナルな人材のコラボレーションによる人手翻訳に強みを持っています。特に医療翻訳案件に関しては、医療顧問を含む専門チームが対応いたします。多言語化にも対応可能です。
さらに、機械翻訳やポストエディットサービス(機械翻訳後の修正)を合わせた翻訳サービスにより 、品質や納期のご要望に対して最適なソリューションをご提案が可能です。
統計的な品質管理手法に基づく品質保証で短期・長期の案件で安定した品質を実現します。翻訳サービスの国際規格 ISO17100と情報セキュリティに関する国際標準規格 ISO27001(ISMS認証)の認証も取得しています。
専門性の高い医療翻訳サービスも安心してお任せください。