まず、変化には典型的なパターンがありますので、そのパターンをご紹介します。
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一般化
(Generalization)
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語や表現が示す対象の範囲が拡張されること。先述した「瀬戸物」や、「詰む」がその例です。
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特殊化(Specialization)
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集合内の特殊な一員を示す変化や限定的な意味に特化する変化。
(例)meat:食べ物→お肉 |
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語義堕落(Pejoration)
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肯定的に使われていた語が、否定的な意味として使われるようになること。
(例)貴様:もともとは、あなたの敬称→人を罵る場合に使用 |
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語義向上(Amelioration)
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否定的に使われていた語が、肯定的な意味として使われるようになること。
(例)Boy:召使、庶民→少年 |
13世紀頃、古フランス語のnice(=愚かな、ばかげた、無知など…)を借用したのが始まりです。当初は古フランス語と同様、「無知、愚かな」という意味で使われていました。15世紀ごろから、女性の振る舞いを評価する単語として「臆病な、内気な」と言う意味を持つようになりました。16世紀には「気難しい、うるさい、細かい」などの意味が出現し、そこから「些細な、精密な」という意味を持つようになりました。
そして18世紀には、現在と同じ意味である「よい、すてきな」などの意味を持つようになりました。ネガティブな意味からポジティブな意味まで、多くの意味を持つ単語であったため、16世紀~17世紀で使われているniceは、どちらの意味で使われているのか文脈を精査してもわからない場合があるほどです。
多数あった意味は、現在までに無くなってしまったものもありますが、今でも残っているものもあります。
古英語では、sillyを「gesælig」(=幸せな、幸運な、繁栄した)という意味で使っていましたが、12世紀~13世紀頃にかけて、意味がどんどん進化していきます。「幸せ」というところから、「神の恵みを受けた、祝福された」→神の恵みを受ける、祝福された人=「信心深い、敬虔(けいけん)な」→信仰の厚い人(一途に神を信仰している)=「純粋、無邪気」という意味にまで広がっていきました。
このようにポジティブな意味で使われていた単語ですが、無邪気な人=悪く言えばかわいそうなくらい世間を知らない人ということで、「かわいそうな、愚かな」という意味に変化していきました。シェイクスピアの有名な作品、『真夏の夜の夢』(1600年)では、sillyは「思慮の浅い」という、現代の意味と類似している使われ方をしています。
今回は意味変化を遂げた英単語を2つご紹介しました。この2つ以外にも変化を遂げてきた単語はたくさんあります。日本語、英語問わず、進化を遂げてきた単語の意味の歴史を調べてみると新たな発見があるかもしれません。昔と違う意味で用いられている単語もあるというのは、翻訳の知識として持っておくとよいでしょう。
今現在わたしたちが使っている単語も100年や200年先の未来では意味が変わっているかもしれないと考えるととても興味深いですね。